風立ちぬ (松田聖子の曲)

風立ちぬ

松田聖子の「風立ちぬ」は、1981年の10月7日にCBS・ソニーからリリースされた7枚目のシングルであり、松田聖子の音楽キャリアにおいて特別な位置を占めています。このシングルは大瀧詠一の唯一のシングル作品でもあり、彼の卓越した作曲センスが光る作品となっています。2004年には紙ジャケット仕様のCDとして再発売され、多くのファンに再び受け入れられました。

概要

「風立ちぬ」は、同名のアルバム『風立ちぬ』からの先行シングルです。この曲は大瀧詠一が作曲し、編曲は彼の変名である多羅尾伴内が行いました。この起用は、松本隆の提案によるもので、松本は大瀧が同年にリリースしたアルバム『A LONG VACATION』が成功を収めていることを踏まえての判断でした。メロディの基盤には、ジミー・クラントンの「ヴィーナス・イン・ブルー・ジーンズ」が存在しています。

本作は大瀧が作曲家として初めてオリコンのランキングでも一位を獲得した作品で、以後一位を取ったのは薬師丸ひろ子の「探偵物語」のみです。A面の「風立ちぬ」は松田自身が出演したグリコ「ポッキー」のCMソングとして起用され、B面の「Romance」は資生堂の洗顔フォームのCMに使用されました。

背景

A面曲「風立ちぬ」は、堀辰雄の小説からインスパイアを受け誕生したものです。制作にあたって松本は、中学時代に訪れた軽井沢の万平ホテルのカフェテラスでの風の流れをイメージし、繊細な歌詞の制作を試みました。しかし作品が完成した際には、予想以上に華やかで大作に仕上がっていたことが松本にとって意外であったことが語られています。ヒットしたとはいえ、若松プロデューサーの期待ほどの成果とはならなかったようです。

大瀧は音楽に対するこだわりが強く、彼のスタイルを貫くため手直しを拒否したことも知られています。松田はこのような大滝との共同制作によって、彼女のアーティスト性が大きく広がったと後に語っています。

「風立ちぬ」のヒットにより、大滝が使用していた変名が親族によって問題視され、後に「CHELSEA」という名義に移行しました。この事件を通じて、大滝は松田の人気の底力を実感したと言っています。

また、レコーディングでは松田が「いい曲だが、自分には向いていない」と言ったため、なかなかボーカルのレコーディングには至りませんでしたが、CMバージョンの録音は行われ、松田はそれを歌い終えて満足そうにスタジオを出たというエピソードが残されています。その後、シングルバージョンでは全テイク見事に歌いあげたとのことです。

大滝はコンサートでのセルフカバーを行い、これが唯一の公演だったため、音源化は難しく、ファンからの期待に応えることは容易ではありませんでした。しかし、2016年には生前の音源を収録したセルフカバーアルバム『DEBUT AGAIN』が発表され、ようやくこの音源が世に出ることとなりました。

収録曲

• - 風立ちぬ（4分35秒）

作曲：大瀧詠一、編曲：多羅尾伴内、ストリングスアレンジ：井上鑑。グリコ「ポッキー」CMソング。

• - Romance（3分27秒）

作曲：平井夏美、編曲：船山基紀。資生堂「エクボ洗顔フォーム・ミルキィクリーム」CMソングで、初めて松田に提供された曲です。

関連作品とカバー

「風立ちぬ」は、様々なアルバムに収録されており、多くのアーティストによるカバーも存在します。

例えば、ロニー・スペクターや徳永英明、水瀬伊織などがこの曲を新たな形で表現しています。こうした広がりは、本作の魅力が時代を超えて愛されている証拠といえるでしょう。

このシングルは、松田聖子のキャリアを彩る名曲として、多くのファンの心に深く残っています。

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