飛んでイスタンブール

飛んでイスタンブール

「飛んでイスタンブール」は、庄野真代による1978年発表の楽曲で、彼女の5枚目のシングルとしてリリースされました。この曲は庄野のキャリアの中でも最も成功した作品の一つとして知られ、オリコンでの売上は46.3万枚、累計58万枚以上、最終的には80万枚を超えるとも言われています。

楽曲の背景と制作経緯

この曲は当初、筒美京平によって、歌手の野口五郎を意識して作られましたが、仕上げた際に筒美は「女性が歌う方が適している」と判断し、未発表のまま女性用にストックされました。1970年代後半、日本の若者が海外旅行を楽しむようになった背景の中、庄野のプロデューサーである三野明洋は、「無国籍なイメージ」の楽曲を希望しました。

そこで、筒美は庄野の過去の楽曲を考慮し、所持していたストックから「飛んでイスタンブール」を選びました。作詞はちあき哲也が担当し、彼は「イスタンブール」という名称を巧みに歌詞に取り入れました。また、アレンジにはギリシャの民族楽器ブズーキも取り入れられ、作曲に携わった船山基紀によってエキゾチックな仕上がりとなりました。

レコーディングのエピソード

レコーディングでは、筒美が庄野に自由に歌わせていましたが、随所で細かな指示を出すようになりました。特に歌詞の締めのフレーズ「夜だけのパラダイス」の表現にはこだわりがあり、やり直しが続きました。しかし、最終的には筒美が「もうそのままでいい」と言い放つ場面もありました。このエピソードからも、筒美の曲作りに対する真剣さが伺えます。

歌詞の内容と情景

歌のテーマは失恋した女性の感傷の旅を描いています。歌詞には“飛んでイスタンブール 光る砂漠でロール”とありますが、実際にはイスタンブールには砂漠は存在しません。庄野自身は、1980年にイスタンブールを初めて訪れた際、楽曲のイメージと現実の風景の違いに驚いたと語っています。

ヒットとその影響

リリース後、楽曲はオリコンランキングで徐々に順位を上げ、最終的にトップ3に到達しました。特に7月24日付のチャートでは3位にランクインし、この曲は庄野にとって初のヒット曲であり、最大の商業成功となりました。また、ヒットの影響で日本におけるイスタンブールの知名度が飛躍的に上昇し、後に「トルコと言えば『飛んでイスタンブール』」という言葉が生まれました。

紙ジャケットとアートワーク

リリース時には、3種類のジャケット写真が存在しました。初回プレス版では雑誌の取材でのホットパンツ姿が使われ、その後ヒットが始まってから赤い服で手を挙げている写真に変更されました。更に後に、寝ている写真へと変わりました。

カバーとその広がり

「飛んでイスタンブール」は多くのアーティストによってカバーされています。岩崎宏美や石川さゆり、小林幸子など、さまざまな歌手がこの名曲を自らのスタイルで表現してきました。これにより、楽曲は更に多くの世代に親しまれ続けています。2015年には、ターキッシュ・エアラインズが「飛んでイスタンブール、そこから飛ぶのがルール」とのキャッチコピーを使用し、商業的にも広がりを見せました。

「飛んでイスタンブール」は、音楽の枠を超えて日本とトルコを結ぶ独特の文化的な架け橋となったと言えるでしょう。

もう一度検索