飛節

飛節：四肢動物の後肢を支える複雑な関節

飛節は、犬、馬、牛などの四肢動物の後肢に存在する重要な関節です。人間でいう足首や踵にあたる部分で、下腿骨と中足骨をつなぐ足根骨を主に指します。後肢の外見上、関節が後方に突出しているのが特徴です。獣医学や動物解剖学の分野では「飛関節」や単に「足首」と呼ばれることもあります。

飛節の構造と機能

四足歩行動物の後肢の足根関節は、一般的に飛節と呼ばれています。この関節は、4つの可動関節面を持ち、多くの動物では下腿骨と足根骨の間で複雑な動きを可能にしています。

下腿骨の脛骨遠位端にある「脛骨ラセン」という凹部に、足根骨の距骨がはまり込み、滑車のように回転します。この脛骨ラセンが斜めに走っているため、足根部は前方に進むと同時に外側に移動するという独特の動きをします。

多数の靭帯によって安定した構造が保たれており、内側側副靭帯と外側側副靭帯が特に重要です。これらの靭帯は脛骨から中足骨近位端に伸び、関節全体を強固に支えています。さらに、踵骨から第4足根骨上を通り中足骨に至る長い靭帯など、多くの小靭帯も関節の安定性に貢献しています。

関節内には複数の関節腔があり、脛骨と距骨の間の関節腔が最も大きくなっています。関節包の薄い部分では関節腔が膨出していることが知られています。また、各関節腔は強い靭帯によって互いに繋がっています。

飛節に関わる筋肉

飛節の運動に関わる筋肉は、飛節の伸展・屈曲、そして趾節関節の伸展・屈曲を行う筋肉群からなります。これらの筋肉は、脛骨前外側の筋群と後面側の筋群に大別されます。

前外側の筋群: この筋群は、飛節の屈曲のみを行う筋肉と、飛節の屈曲と同時に趾節を伸展する筋肉から構成されます。総腓骨神経によって支配されています。前脛骨筋、第三腓骨筋、長腓骨筋、短腓骨筋などが含まれますが、動物種によって存在しない筋肉もあります。例えば、犬や猫には第三腓骨筋がなく、有[[蹄類]]は短腓骨筋を持ちません。ウマでは、短腓骨筋と長腓骨筋が退化し、第三腓骨筋も細い腱になっています。

後面の筋群: 腓腹筋、ヒラメ筋、浅趾屈筋、深趾屈筋などからなり、脛骨神経の支配を受けています。犬にはヒラメ筋がありません。

飛節と肢勢

飛節の角度や後肢の配置は、動物の姿勢や運動能力に大きく影響します。いくつかの代表的な肢勢を以下に示します。

直飛節: 横から見て飛節の角度が浅く、後肢が後方に伸びている状態。犬ではストレートホックと呼ばれます。競走馬では、弾力性に欠け、故障しやすい、バネが効かないと評価されることが多いです。
曲飛節: 飛節から球節までの管骨が前方に傾いている状態。多くの馬では軽度の曲飛傾向があり、問題となることは少ないですが、極端な場合は歩幅が狭くなり、運動能力が低下する可能性があります。
X状肢勢: 後ろから見て、後肢の飛節が接近し、飛節から下が外側に曲がっている状態。極端な場合はカウホックと呼ばれ、推進力を阻害します。
O状肢勢: X状肢勢とは逆に、後肢の飛節が離れすぎている状態。

飛節の異常

飛節には様々な異常が生じることがあります。これらは総称して「飛節腫」と呼ばれ、その原因や症状は様々です。主な異常としては以下のものがあります。

飛節内腫 (bone spavin): 飛節の内側に骨瘤が生じる病気。ウマに多く見られ、過度な運動や構造不良、肢勢不良などが原因で起こります。跛行を伴う場合もあります。競馬では「スパービン」と呼ばれます。
血管性飛節内腫 (blood spavin): 足根部分の静脈が拡張してできる血管性の腫れ。
飛節外腫 (outside spavin): 飛節の外側に限局性の腫瘤ができる病気。
飛節軟腫 (bog spavin): 飛節の関節包に水腫が生じる病気。
飛節後腫 (curb): 飛節の後部に腫瘍や骨瘤ができる病気。
飛端腫 (capped hock): 踵部嚢腫。挫傷によって発生します。

これらの病気の治療法は、原因や症状によって異なります。早期発見と適切な治療が重要です。

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