飫肥杉

飫肥杉（おびすぎ）

概要

飫肥杉は、宮崎県南東部の日南市周辺で栽培されるスギの品種です。この地域特有の気候と土壌が、飫肥杉の独特な性質を育んでいます。

特徴として、樹脂を多く含むため吸水性が低く、軽量でありながら強度が高い点が挙げられます。この特性から、かつては造船材として重宝されました。特に、幹を平らに加工した「弁甲」と呼ばれる状態で出荷され、船の側面に使われました。一般的なスギに比べて成長が早いものの、造船材として利用するためには幹を太くする必要があったため、伐採までには50年から70年程度の歳月を要しました。

主な産地は、日南市旧市・北郷地区の広渡川流域を中心とする地域です。その他、日南市南郷地区や宮崎市の一部（木花地区、青島地区、田野町、清武町）の山間部でも栽培されています。また、飫肥藩の領外であった串間市や都城市の一部にも移植されました。現在、飫肥杉は宮崎県の木として、フェニックス、ヤマザクラと共に指定されています。

歴史

飫肥杉の歴史は、江戸時代初期に飫肥藩の財政難から始まりました。当時の藩主、伊東祐慶は、換金可能な産物として木材資源に着目し、マツやクスノキなどの大木を各地に出荷していました。

1615年、伊東祐慶はスギの植林を指示しましたが、初期の植林は伐採に追いつかず、山林の荒廃に歯止めがかかりませんでした。1686年に堀川運河が完成し、木材の出荷が円滑になったものの、18世紀に入ると天然の木材資源が枯渇し始めました。

1718年、藩主伊東祐実は、植林を条件に伐採した材木の利益を住民と藩で半分ずつ分配する「二部一山の法」を制定し、本格的な植林を奨励しました。18世紀後半には、野中金右衛門や石那田実右衛門などの藩士が植林事業に尽力し、飫肥杉の安定的な育成に貢献しました。1791年、飫肥藩は「二部一山の法」を「三部一山の法」（利益配分は住民3分の2、藩3分の1）に改め、林業を監督する山方奉行を新設するなど、植林事業をさらに強化しました。

「三部一山の法」の思想は、1878年制定の「部分木仕付条例」や、1899年制定の「国有林野法」にも受け継がれ、日本の営林法令の基礎となっています。

1965年頃から造船用木材の需要が減少したため、飫肥杉の用途は住宅用建築材料などへと転換が進められています。

NICシート

近年、飫肥杉をシート状に加工した「NICシート」が開発されました。このシートは、飫肥杉の持つ特性を活かし、様々な用途への応用が期待されています。2022年には、このシートを用いた飫肥駅の駅名看板が設置され、地域資源の新たな活用事例として注目を集めています。

まとめ

飫肥杉は、江戸時代から続く長い歴史の中で、地域の経済と文化を支えてきた重要な資源です。その特性を活かした新たな活用方法の開発も進んでおり、今後も地域を代表する木材として、その存在感を示し続けるでしょう。

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