飯山茂

飯山茂：情報将校として時代を読み解いた軍人

飯山茂（いいやま しげる）は、1923年（大正12年）に鹿児島県で生まれ、2004年（平成16年）に81歳で生涯を閉じた、日本の元陸軍軍人であり、陸上自衛官です。最終階級は陸将、第15代東部方面総監を務めました。情報畑のエキスパートとして、その卓越した洞察力と情報分析能力で、数々の重要な局面で活躍しました。

卓越した情報収集能力

飯山氏の特筆すべき功績の一つに、在ソ連日本大使館付防衛駐在官時代の活躍があります。当時、モスクワの喫茶店から列車の動きを監視していた飯山氏は、通常とは異なる積荷を載せた列車が頻繁に通過していることに気づきました。詳細な分析の結果、その積荷が戦車であることを突き止め、ソ連によるチェコスロバキア侵攻を予測し、いち早く日本に打電しました。この逸話は、飯山氏の情報収集能力と、国家の危機を未然に防ごうとする強い責任感を示すものとして、広く知られています。

陸上幕僚長への道

飯山氏は、そのキャリアの中で陸上幕僚長の有力な候補者の一人として目されていました。しかし、宮永スパイ事件という不祥事が起こり、当時の陸上幕僚長が引責辞任した際、飯山氏の陸幕2部長時代の部下が、機密漏洩に関与していたことが判明しました。この事件が、飯山氏の陸幕長への道を事実上閉ざすことになり、結果として退官という道を選びました。

軍人としての経歴

飯山氏は、1942年（昭和17年）に陸軍士官学校に入校し、1944年（昭和19年）に卒業、陸軍少尉に任官しました。終戦時は陸軍中尉として、陸軍予科士官学校生徒隊の区隊長を務めていました。戦後、1951年（昭和26年）には警察予備隊に入隊し、1966年（昭和41年）に1等陸佐に昇進、その後、在ソビエト日本大使館付防衛駐在官として、再び情報の世界で活躍します。帰国後は、防衛研修所所員、第41普通科連隊長などを経て、1973年（昭和48年）に陸将補に昇進、西部方面総監部幕僚副長に就任しました。その後、陸上幕僚監部第2部長、第8師団長を経て、1978年（昭和53年）には第15代東部方面総監に就任しました。1980年（昭和55年）に退官し、その後の1993年（平成5年）には、長年の功績が認められ、勲三等旭日中綬章を受章しました。

人物像

飯山氏は、情報将校として冷静沈着な判断力と卓越した分析能力を持っていました。また、責任感が強く、国家の危機に際しては、常に最善を尽くそうとする強い意志を持っていました。その一方で、部下や後輩に対する面倒見も良く、多くの人に慕われていたといわれています。情報の世界で培われた洞察力と、その誠実な人柄は、多くの人々から尊敬を集めていました。

晩年

晩年は、前立腺がんとの闘病生活を送る中、2004年（平成16年）に81歳で亡くなりました。その生涯は、激動の時代を生き抜いた軍人として、また、情報将校として、後世に語り継がれています。

参考資料

山崎正男 編集責任、保存版『陸軍士官学校』　秋元書房、昭和44年
松村劭　「オペレーショナル・インテリジェンス　意思決定のための作戦情報理論」　日本経済新聞社

関連人物

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* 松村劭

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