飯島流引き角

飯島流引き角：角道を開けずに築く堅牢な防御網

飯島流引き角は、将棋における居飛車穴熊戦法の一種であり、振り飛車に対して用いられる独特の戦法です。その名の通り、角道を開けずに角を引き、左美濃囲いを構築することで、振り飛車側の攻撃を抑制し、堅実な指し回しを実現します。

特徴

この戦法の最大の特徴は、角道を開けずに駒組みを進める点にあります。通常、居飛車は角道を開けることで攻撃力を高めますが、飯島流引き角では、あえて角道を開けずに左美濃に囲うことで、振り飛車側の角の睨みを軽減し、相手の攻撃を封じ込めます。

特に、近年注目されている藤井システムに対して有効な対策として知られており、多くの棋士がその有効性を認めています。藤井システムは、振り飛車の急戦型戦法ですが、飯島流引き角は持久戦を強いられるため、システムの急戦的な展開を封じる効果があります。

さらに、飯島流引き角は後手番だけでなく、先手番でも用いられる点が大きな特徴です。従来、引き角は後手番で用いられることが多かったのですが、飯島栄治八段は先手番でも引き角を効果的に用いる方法を開発し、その有効性を示しました。

戦法の狙い

飯島流引き角の狙いは、以下の3点に集約されます。

1. 振り飛車側の角の睨みを軽減する: 角道を開けないことで、相手の角による攻撃を抑制します。
2. 堅牢な囲いを構築する: 左美濃囲いは、非常に堅牢な囲いであるため、相手の攻めに対して高い防御力を発揮します。
3. 持久戦に持ち込む: 振り飛車側は、急戦的な展開を期待していることが多いですが、飯島流引き角は持久戦に持ち込むことで、相手の戦術を封じ込めます。

発展と歴史

飯島流引き角は、飯島栄治八段によって開発され、2010年に升田幸三賞を受賞したことで広く知られるようになりました。しかし、この指し方自体は飯島八段の独創ではなく、以前から類似の戦法が存在していました。飯島八段は、それらの戦法を改良・発展させ、先手番でも使えるように体系化しました。

特に先手番での引き角は、飯島八段の大きな功績であり、従来の後手番限定の戦法を先手番でも有効に活用できることを示しました。先手番での引き角は、後手番と比べて複雑な局面展開になりがちですが、飯島八段は独自の工夫によってその難点を克服しました。

対様々な振り飛車

飯島流引き角は、様々な振り飛車に対して有効な戦法です。四間飛車や中飛車など、相手の戦法に合わせて柔軟に対応できる点が強みです。特に、藤井システムのような急戦型の振り飛車に対しては、持久戦に持ち込むことで相手の戦術を封じる効果があります。しかし、相手が居飛車に転じる可能性も考慮する必要があります。

発展性

飯島流引き角は、現在も発展を続けており、多くの棋士によって研究されています。今後、さらに洗練され、より強力な戦法となる可能性を秘めています。

まとめ

飯島流引き角は、角道を開けずに堅牢な囲いを築き、振り飛車の攻めを抑制する独特の戦法です。後手番だけでなく先手番でも用いることができ、特に藤井システムへの有効な対策として知られています。その堅実性と柔軟性から、現代将棋において重要な戦法の一つと言えるでしょう。

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