飯田十基

飯田十基：雑木の庭を創始した造園家

飯田十基（いいだ じゅうき、1890年 - 1977年）は、日本の造園家、作庭家であり、本名を寅三郎といいます。彼は昭和初期に、それまでの庭園の形式にとらわれない「雑木の庭」を創始した人物として知られています。千葉県成田市出身。

生涯と足跡

飯田十基は、千葉県立旧制成田中学校を中退後、東京下谷の松本幾太郎のもとで7年間修行を積みました。その後、雑司が谷の岩本勝五郎に師事し、椿山荘や小田原古稀庵の庭園整備に5年間携わります。さらに日本橋の鈴木次郎吉に入門し、小庭を5年間学んだ後、独立しました。鈴木のもとで修行する傍ら、築地の工手学校（現工学院大学）土木学科に通い、図面の書き方を習得しています。

1918年には東京目白に飯田造園事務所を開設。1932年には小形研三が、井下清の紹介で入所。1934年には事務所を渋谷区初台に移転しました。1940年には、龍居松之助の紹介で星進が入所しています。1938年の日本造園士会発足時には理事に就任。その後一時消滅しましたが、1965年の再結成時に再び参画しました。

1946年には造園会社東京ガーデナーを設立し、主として進駐軍関連の仕事を受注していました。この会社は三越造園部の仕事を請けてから起動に乗り出し、1950年には弟子の小形に譲ります。自身の会社「東京庭苑」は1957年に設立。これも1958年に小形が社長となり、自らは顧問に就任しました。その間の1949年には株式会社多摩植木の顧問もつとめています。

その他、1947年の東京造園倶楽部結成時に顧問。1970年に日本造園士会理事長。1974年は日本庭園協会理事長に就任しました。1976年に日本造園修景協会顧問。

雑木の庭の創始

飯田十基は、従来の庭園作法を作庭式と呼び、自らの庭を自然風と称しました。彼の自然風の庭は、上原敬二に「百人が百人最良と認める」と言わしめるほどでした。徒弟時代、渋沢栄一邸庭園では既存の雑木林が利用されていたのに対し、山内公爵代々木邸では既存樹林を切り開いてマツやマキに植え替えて作庭していたことに疑問を抱き、雑木を積極的に活用する手法を確立していきました。

雑木の庭は清家清など建築家も自分の建築作品の庭に採用しましたが、特に東京オリンピック以降は、作庭に雑木を使用する者が増加していきました。

事務所では大学卒の「弟子」と、細部の仕上げまでを担当する専門技能者の「職人」とを契約区別し、「弟子」の担当した庭を将来自分の作品として記録してよいこと、事務所と別に個人で依頼を受けた仕事を請けてもよく、会社の職人を独自に使うことも許されました。「弟子」は入社して1年は材料の勉強をすること、また独立を奨励していました。

多才な趣味人

飯田十基は、いけばな、篭つくり、花押、茶杓、盆栽に盆景、書などをたしなみ、さらに謡曲は観世流（夫人が鼓）、茶は斉藤勝雄に師事していました。多趣味な人物であったことが伺えます。

代表作

飯田十基の代表作としては、等々力渓谷内日本庭園、深谷光軌との共同作である渡辺邸庭園、シアトル・ワシントン大学日本庭園（北村信正と、1960年）、成吉邸庭園、富士邸庭園、飯田十基旧飯田邸庭園（自邸）、不二迎賓館庭園（1962年　現存せず）、野々宮写真館の庭（東京九段）、オーストラリア大使館日本庭園（キャンベラ、1961年）、成田山東京別院深川不動堂奥書院庭園（1962年）、ニューヨーク世界博覧会出展和風庭園（1964年）対鴎荘聖蹟記念館庭園(1928年)、吉田元助邸庭園(1930年)などがあります。

その他川合玉堂邸庭園（新宿区牛込）、女流文人吉屋信子邸庭園（新宿区牛込）、吉田五十八邸庭園（東京馬込）、杵屋六左衛門邸庭園（静岡県熱海市）など、建築家・吉田五十八の手がけた邸宅の庭園を多くつくっています。

ドイツ大使館公邸公館他一連の造園設計で、日本造園学会賞計画設計作品部門を受賞。

1966年には勲五等双光旭日章を受章しました。

参考文献

斉藤隆介『職人衆昔ばなし』文藝春秋　1967年、文春文庫 1979年
小形研三「飯田十基先生とその庭」別冊庭3号、建築資料研究社、1977年
* 日本庭園協会編、飯田十基庭園作品集、創元社、1980年

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