飯田汲事

飯田汲事（いいだ くめじ / くみじ、1909年2月21日 - 2000年7月17日）は、日本の地震学、地球科学に多大な貢献をした研究者です。名古屋大学名誉教授であり、1980年には勲三等旭日中綬章を受章しています。

生涯と業績

飯田は、旧制飯山中学、松本高等学校を経て、1934年に東京帝国大学理学部地震学科を卒業しました。その後、同大学の地震研究所で研究に従事し、1944年には理学博士の学位を取得しました。学位論文は「地殻物質の弾性的性質に関する研究」です。

飯田の主な業績の一つに、1939年に石本巳四雄と共同で発表した「石本・飯田の式」があります。これは、ある観測点で記録された地震動の最大振幅と出現頻度との関係を表す式であり、地震学において重要な基礎理論となっています。

また、飯田は津波研究の世界的権威としても知られています。今村明恒とともに設定した津波等級は、現在でも広く使われています。過去に発生した地震の調査も多数行っており、特に濃尾地震の研究は有名です。そのほか、公害、都市計画、物理探査、温泉など、幅広い分野で活躍しました。

主な経歴

飯田は、研究者としてだけでなく、教育者としても多くの人材を育成しました。1954年に名古屋大学理学部教授に就任し、1966年には同大学犬山地殻変動観測所の初代所長を務めました。1972年に名古屋大学を定年退職後、愛知工業大学教授に就任しています。

学会活動も活発に行い、1960年より日本地震学会委員長、1971年からは日本測地学会委員長を務めました。1978年には日本地震学会の名誉会員となっています。

国際的にも活躍し、1971年には国際測地学・地球物理学連合国際地震地球内部物理学部門執行委員、1979年には同連合の国際津波委員会委員長に就任しました。

主な著書と論文

飯田は、数多くの著書や論文を発表しており、その研究成果は広く社会に貢献しています。

著書

天正大地震誌
明治24年（1891）濃尾地震の被害と規模
明応、宝永、安政東海地震と津波被害について
昭和20年1月13日 三河地震の震害と震度分布
地震 その科学と防災（1981）

主要論文

地震初動方向の分布と津浪初動方向分布との關係に就いての一考察
地震動の大きさと其の卓越振動周期

共著

岸上冬彦、昭和14年5月1日男鹿地震の津浪
志知竜一, 松浦宏、犬山における地殻変動の連続観測
坂部和夫、三河地震における深溝断層の延長部について
多田堯、微小および極微小地震のマグニチュードと卓越周期との関係について
正木和明, 楓重彦, 飯田汲事、1978年伊豆大島近海地震の被害と震度について
谷口仁士：常時微動の測定結果より求めた地盤内のひずみ分布
谷口仁士、人工造成地盤における地震時被害予測
* 正木和明、坪井利弘：名古屋地盤メッシュ別S波増幅度分布

飯田汲事は、地震学、地球科学の発展に大きく貢献した人物であり、その業績は後世に受け継がれています。

もう一度検索