飯田高誉

飯田高誉：現代美術から戦争の記憶まで、多様な視点で芸術を語るキュレーター

飯田高誉氏は、1956年生まれの日本のキュレーターです。現代美術から戦争画まで、幅広い分野にまたがる活動で知られています。東京大学、京都造形芸術大学、青森県立美術館など、日本の主要な文化機関で要職を歴任し、数々の国際的な展覧会を企画・監修してきました。現在、自身設立のスクールデレック芸術社会学研究所所長を務め、現代社会における芸術の役割を鋭く問いかける存在となっています。

フジテレビギャラリー時代と独立

飯田氏のキャリアは、1980年から10年間在籍したフジテレビギャラリーで始まりました。クレー、ダリ、ピカソといった巨匠から、草間彌生、横尾忠則といった日本の現代美術家まで、幅広い展覧会の企画に携わりました。この時代には、草間彌生、横尾忠則、イヴ・クラインといった作家たちの個展を企画する傍ら、フェリックス・ガタリのような思想家も巻き込み、美術界にとどまらない多角的な視点を取り入れた展覧会制作を行っていました。同時期には、「宇宙発明会議 VISIONS OF ART」や「テレビ美術館」といったテレビ番組の企画・監修にも携わっています。10年間のギャラリー勤務の後、1990年に独立し、インディペンデント・キュレーターとしての道を歩み始めました。

インディペンデント・キュレーター時代：多様なプロジェクトへの参画

独立後は、スカイパーフェクトTV!の美術番組「アートフォーラム」の制作や、森万里子の作品「ドリーム・テンプル」の日本側ディレクションなど、テレビやメディアを巻き込んだ多様なプロジェクトに参画しました。電通新社屋プロジェクトではアーティスティック・ディレクターとして、ジャン・ヌーヴェルをはじめとする建築家や、蔡國強、オラファー・エリアソン、オノ・ヨーコなど、国内外の著名なアーティストたちとコラボレーションを行いました。また、フィリップ・モリス・アートアワード展のエキジビション・ディレクターや、「六本木クロッシング」展の選考委員を務めるなど、現代美術界の中核を担う存在として活躍しました。

京都造形芸術大学での教育活動と「戦争と芸術」展シリーズ

2005年から京都造形芸術大学で教鞭をとり、国際芸術研究センター所長を務めました。この期間には、戦後日本の美術史におけるタブーとされてきた戦争画に焦点を当てた「戦争と芸術」展シリーズを企画しました。藤田嗣治や中村研一といった戦争画の巨匠と、杉本博司や横尾忠則といった現代美術家を対峙させることで、戦争のイメージやその表現方法の変化を多角的に検証する試みを行いました。

青森県立美術館時代と国際芸術祭構想

2011年から2014年にかけては、青森県立美術館の美術統括監（チーフキュレーター）として活躍しました。青森県立美術館開館10周年を機に、青森を舞台とした国際芸術祭の構想を立ち上げ、「青森EARTH」というプレイベントを開催。寺山修司や工藤哲巳など、青森ゆかりの作家たちの作品にも光を当てました。

スクールデレック芸術社会学研究所：現代社会と芸術の未来

2018年には、恵比寿にスクールデレック芸術社会学研究所を設立しました。この研究所では、現代美術の枠にとらわれない、実験的で多様な活動を展開しています。近年は、デヴィッド・リンチやアニッシュ・カプーアといった海外のアーティストの展覧会を企画するなど、国際的な活動を積極的に行っています。また、2022年には日本赤軍元最高幹部の重信房子へのインタビューを行い、社会的な議論を喚起しました。

多岐に渡る活動と今後の展望

飯田氏の活動は、キュレーション、教育、執筆、インタビューなど多岐に渡り、現代美術のみならず、戦争、社会、そして歴史と芸術の関係を探求する姿勢が見て取れます。これからも、独自の視点と多様なネットワークを活かし、国内外で活動を展開していくことが期待されます。

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