飯野健二

飯野健二七段：将棋界を彩った棋士の歩み

飯野健二七段は、1954年7月7日、東京都葛飾区に生まれました。10歳の頃、父親から将棋の手ほどきを受け、その才能を開花させます。1968年、6級で奨励会に入会。その後は順調に昇段を重ね、各段位昇級に1年以上かけることなく、着実に実力を高めていきました。

1973年度後期からは三段リーグで活躍しますが、四段昇段には至らず、制度廃止という転機を迎えます。しかし、1975年3月4日、武市三郎六段との対局で勝利し、12勝4敗の規定を満たして、晴れてプロ棋士（四段）となりました。この重要な一戦で飯野七段は、奨励会時代以来2度目となる振り飛車（阪田流向かい飛車）を採用。自身にとって未知の戦法を選択することで、プレッシャーを軽減させようとした戦略が功を奏したと言えるでしょう。

プロ入り後も飯野七段の活躍は続きます。プロ3年目となる1977年度には、全棋士中5位という高い勝率（0.667）を記録しました。また、第17期十段戦予選では5連勝と好成績を収め、十段リーグ入りまであと一歩に迫りますが、予選決勝で大山康晴十五世名人に惜しくも敗れました。当時、十段リーグ本戦進出は各期2名のみという狭き門であったことを考えると、その実力は高く評価できます。

その後も、棋聖戦では第41期と第47期で本戦進出を果たすなど、タイトル戦線にも食い込む活躍を見せます。順位戦では、C級2組で2期連続次点（4位）という惜しい結果も経験しましたが、持ち前の粘り強さで戦い抜きました。また、第1期竜王戦では5組を優勝し、4組への昇級を果たすなど、竜王戦でも存在感を示しました。

2000年度にはC級2組順位戦で降級点を喫し、フリークラスに転出。その後は順位戦復帰を果たすことなく、規定により2011年7月6日に引退しました。しかし、その棋士としてのキャリアは長く、2019年4月1日には、退役棋士昇段規定により八段に昇段しました。

将棋界での活躍だけでなく、飯野七段は指導者としてもその才能を発揮しました。1997年から関東奨励会幹事を務め、2009年には関東研修会幹事に就任。後進の育成に尽力しました。特に、自身の三女である飯野愛女流二級のプロ入りを支援したエピソードは有名です。高校2年生という比較的遅い年齢で女流棋士を志した娘に対して、普段の優しい父親とは異なる厳しさで指導にあたりました。その厳格な指導の下、約10年の歳月を経て、飯野愛女流二級は女流プロ棋士としての資格を得ることになります。

1970年代後半、矢倉戦法が主流であった時代において、飯野七段はひねり飛車や力戦型の将棋を好んで指し、個性的な棋風で知られていました。また、NHK杯戦の解説においては、棋士としての力量に加え、人気も重要であると発言するなど、将棋界への深い洞察を示しました。

通算成績は989対局、445勝544敗、勝率0.4499です。数々の著書を出版するなど、将棋普及にも貢献した飯野健二七段。その棋士人生は、多くの将棋ファンに記憶されるにふさわしい、輝かしいものでした。 彼の功績は、将棋界に長く語り継がれていくことでしょう。

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