阪田流向かい飛車

阪田流向かい飛車：歴史と戦術

阪田流向かい飛車は、将棋における力戦型の振り飛車戦法です。相居飛車から後手が変化するこの戦法は、1919年、坂田三吉が土居市太郎との対局で用いたことで有名になりました。しかし、その起源は江戸時代まで遡り、坂田三吉の発案ではありません。金親盤次の定跡書『金親駒組集』には、既に平手向飛車の記述があり、坂田土居戦より130年以上前に存在していたことが分かります。

戦法の特徴

阪田流向かい飛車は、急戦と持久戦の両方に対応できる柔軟性が特徴です。居飛車党にも使いやすいとされ、筋違い角などを活用して先手の飛車先を積極的に攻撃します。その攻撃は単純明快ながら破壊力が高く、油断していると一気に形勢を崩される危険性があります。

坂田三吉自身も、全ての対局で阪田流向かい飛車を用いていたわけではありません。有名な「南禅寺の決戦」（木村義雄対坂田三吉）では、別の戦法を採用しています。

坂田土居戦は、大阪と宝塚を跨いで17日間行われた大熱戦でした。この対局で角を損する形勢になったにも関わらず、坂田三吉が勝利したことで「阪田流向かい飛車」の名が広く知れ渡るようになりました。土居市太郎は、坂田の手筋を「古人の法」と評し、新手とはみなしていませんでした。

指し方の例

阪田流向かい飛車の指し方は様々です。

基本形: ▲7六歩△3四歩▲2六歩△3二金▲2五歩という相居飛車模様から、△3三角▲同角成△同金と進めて向かい飛車に振ります。その後△2四歩▲同歩△同金と攻めていきます。
小林式: 小林健二が好んで用いた戦法で、△5二金または△5二玉と陣形を構え、△2四歩▲同歩△同銀と積極的に攻めます。
* 坂田流角命戦法: 腰掛銀と2八角打ちを組み合わせ、居飛車の飛車を狙う戦法です。

現代将棋における阪田流向かい飛車

豊川孝弘は、著書の中で阪田流向かい飛車の急戦策は上級者には通用しにくいと指摘しています。しかし、一手損角換わりとの類似性から、特に▲7八金△9四歩の交換が発生した局面では、後手が阪田流向かい飛車を選択することが多く、山崎隆之、糸谷哲郎、渡辺明、森下卓といったトップ棋士も採用しています。佐藤康光や土佐浩司といった、元々ノーマル向かい飛車やダイレクト向かい飛車を得意とする棋士も、この戦法を用いています。糸谷哲郎は2018年度に後手番で4回使用し、全て勝利しています。

まとめ

阪田流向かい飛車は、長い歴史を持つ戦法でありながら、現代将棋でも有効な戦法として、多くのプロ棋士によって研究され、実践されています。その多様な指し方と柔軟性、そして攻撃的な戦術は、将棋の魅力を存分に味わえる戦法と言えるでしょう。 今後も、この戦法がどのように進化していくのか、注目です。

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