養廉銀

養廉銀の概要

養廉銀（ようれんぎん）は、清朝の雍正帝によって創設された制度で、官吏に支給される俸給の加算や地方行政への交付金として機能しました。この制度の導入は、官吏の給与を適正化し、汚職を未然に防ぐことを目的としています。特に清朝初期、官吏の俸禄は明代の基準に基づいて低く抑えられており、生活が困難な官吏が多く、汚職が横行していました。

歴史的背景

清朝の初期には、文官の給与が明代の万暦年間の『大明会典』に記載された金額が基準となっていました。そのため、知県の月給はわずか三両で、実際には生活費が足りず、官吏たちは汚職に手を染めざるを得ない状況でした。この汚職の蔓延は、康熙帝の時代にも続いており、行政の停滞を懸念するあまり、汚職の取り締まりには熱心ではありませんでした。

このような腐敗を改善するために、1723年に養廉銀制度が導入され、官吏の道徳向上と汚職対策が図られました。しかし、養廉銀は全額が官吏の個人の懐に入ることはなく、地方行政の費用に充てられる必要がありました。したがって、この制度は官吏に対する加算俸給である一方で、地方行政への支援の側面も強く持っています。

支給額と財源

養廉銀の額は一般的に官吏の本給の10倍から100倍までに設定され、一部の記録では総督が13,000から20,000両、巡撫が10,000から15,000両とされています。例えば、台湾の巡撫を務めた劉銘伝は年給155両に対して、10,000両の養廉銀を受け取っていました。このように、養廉銀が地方官吏の収入を大幅に引き上げる役割を果たしました。

問題点

しかし、養廉銀は官吏全体の生活を改善するには不十分であったことも事実です。特に北京の官吏は収入が限られており、贈賄を受け取ることが一般的でした。清末の詩人、李慈銘の日記には、「京官は貧乏で生活ができないため、地方官が上京すると群がる」という記述が残っています。また、曽国藩は家庭の財政が厳しい中で地方官からの賄賂が必要であると否応なく認識していました。

さらに、養廉銀の支給によって官吏たちの贅沢な生活が助長されることになり、清朝末期には慢性的な財政難が続いていました。そのため、本給や養廉銀の支給が遅れることがしばしばありましたが、中には「養廉が不足という名目で横領を正当化する官吏」も存在しました。

参考文献

1. Madeleine Zelin（曾小萍）著，董建中譯：《州縣官的銀兩——18世紀中國的合理化財政改革》（北京：中國人民大學出版社，2005）
2. 佐伯富著，鄭樑生譯：《清雍正朝の養廉銀研究》（臺北：臺灣商務印書館，1996）

もう一度検索