首藤康之

首藤 康之（しゅとう やすゆき）は、1971年11月11日、大分県に生まれた日本のバレエダンサー、そして俳優です。

幼少期、小学3年生の時にミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』を鑑賞し、その舞台に感銘を受けたことを契機にバレエの世界へ足を踏み入れました。中学時代には単身ニューヨークやロンドンへ渡り、海外でバレエの研鑽を積みます。帰国後、モーリス・ベジャール振付の東京バレエ団公演『ザ・カブキ』を観て強い衝撃を受け、15歳で同バレエ団のオーディションを受け入団しました。

東京バレエ団では早くからその才能を開花させ、17歳でベテランダンサー藤堂真子のパートナーに抜擢されるなど頭角を現します。1990年には古典の代表作『眠れる森の美女』のデジレ王子役で主役デビューを飾り、その実力と端麗な容姿で注目を集めました。特に1992年には、ロシアのボリショイ劇場とマリインスキー劇場で『ラ・シルフィード』のジェームス役を踊り、現地で高い評価を得て、その後の代表作の一つとなります。ベジャール作品にも深く関わり、『M』『くるみ割り人形』『ペトルーシュカ』『ボレロ』など数々の主要作品で主役を演じ、シルヴィ・ギエムとの共演による『春の祭典』も高い評価を受けました。また、イリ・キリアンやジョン・ノイマイヤーといった世界的な振付家の作品にも取り組み、『パーフェクト・コンセプション』や『スプリング・アンド・フォール』の日本初演を担うなど、コンテンポラリーダンスの分野でもその実力を遺憾なく発揮しました。

2004年4月、東京バレエ団を退団し、特別団員としてその後も関わりを持ちながら、活動の場を大きく広げます。シディ・ラルビ・シェルカウイ振付の『アポクリフ』では、2007年から2016年にかけて全世界13カ国を巡るワールドツアーに参加し、国際的な評価を確固たるものとしました。退団後は、小野寺修二やウィル・タケット、中村恩恵など国内外の著名な演出家や振付家、様々なダンスカンパニーとのコラボレーションを積極的に行い、自身のプロデュース公演『DEDICATED』を上演するなど、現代におけるダンス表現の最前線を走り続けています。ピナ・バウシュが芸術監督を務めたNRW国際ダンスフェスティバルへの出演など、海外での活動も継続的に行っています。

ダンス活動と並行して、2000年にはジョン・ティリンジャー演出の『ニジンスキー』でストレートプレイに初挑戦し、俳優としてのキャリアもスタートさせます。以来、長塚圭史、マックス・ウェブスター、串田和美といった多様な演出家の作品に出演し、舞台俳優としても高い評価を獲得。映像分野でも、浅野忠信監督の『トーリ』や黒沢清監督の『岸辺の旅』といった映画作品、TBSドラマ『99.9 刑事専門弁護士』シリーズへのレギュラー出演など、多岐にわたるメディアで活躍しています。

また、フランスの高級ブランドであるイヴ・サンローランのインターナショナル広告モデルを務めるなど、その存在感はファッション界でも注目されました。近年は、自身の経験を活かし、演出や振付、ステージングといった分野でも才能を発揮しています。2012年に公開された自身のドキュメンタリー映画『今日と明日の間で』では、シンガーソングライターの椎名林檎が首藤のためにオリジナル楽曲を提供するなど、異分野のアーティストとの交流も深いです。

これらの多岐にわたる活動の中でも、2012年には中村恩恵との共同構成・演出・振付作品『Shakespeare THE SONNETS』が高く評価され、芸術選奨文部科学大臣賞舞踊部門を受賞しました。バレエダンサーとして頂点を極めた後も、表現者として常に新しい挑戦を続け、その才能とカリスマ性で観客を魅了し続けている、日本を代表するアーティストの一人です。

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