香川綾

香川綾（かがわあや、1899年 3月28日 - 1997年4月2日）は、日本の栄養学の発展に多大な貢献をした人物です。香川栄養学園の創始者であり、医学博士でもあります。彼女の生涯は、栄養学の普及と国民の健康増進に捧げられました。

生い立ちと教育

1899年、和歌山県で警察官の娘として生まれた香川綾は、幼少期から食生活の大切さを教え込まれて育ちました。14歳で母親を亡くしたことがきっかけで医師を志すようになり、和歌山県師範学校女子部を経て、東京女子医学専門学校（現在の東京女子医科大学）に進学しました。その後、東京帝国大学医学部の島薗順次郎のもとで研究に携わりました。

結婚と栄養学への転身

1930年、同じ研究室でビタミンの研究をしていた香川昇三と結婚。1933年には、夫婦で家庭食養研究会を設立し、これが後の香川栄養学園の前身となりました。1937年には女子栄養学園と改称し、1935年には雑誌『栄養と料理』を創刊するなど、栄養学の普及に力を注ぎました。1945年に夫が死去したことをきっかけに、栄養学に一生を捧げる決意を固めました。

栄養学研究と教育

1949年、「本邦食品のビタミンB1と脚気の研究」で東京大学から医学博士の学位を取得。同年、香川栄養学園を設立しました。その後、1950年に女子栄養短期大学、1961年には女子栄養大学を創設し、初代学長に就任しました。1965年には栄養学部を創設し、管理栄養士資格の創設にも貢献しました。1969年には、大学院栄養学研究科修士課程を設置するなど、教育機関の整備にも尽力しました。

主な功績

香川綾の主な功績は、以下の通りです。

胚芽米の普及

昭和初期に夫と共にビタミンに関する研究を行い、胚芽米にビタミンB1が多く含まれることを証明しました。当時、脚気が蔓延していたこともあり、胚芽米の普及を提唱しました。また、胚芽を残したまま精米する技術も開発しました。

四群点数法の提唱

栄養バランスの重要性を説き、食品を4つのグループに分けてバランス良く摂取するための「四群点数法」を提唱しました。この方法は、一般の人々にも理解しやすく、実践しやすいものでした。食品を「乳・乳製品、卵」「魚介類、肉類、大豆・大豆製品」「野菜、芋類、果物」「穀物、砂糖、油脂」の4群に分類し、それぞれの点数を定めることで、バランスの取れた食事を簡単に実現できるようにしました。各群から必要な点数を摂取することで健康維持を促すものです。

計量器具の開発

栄養バランスを定量的に把握するために、計量スプーンと計量カップを考案しました。これにより、家庭でも調味料の量を正確に測ることが可能となり、栄養指導の現場や料理の再現性が向上しました。

栄養学の社会的地位向上

栄養学が家政学部の一授業内容に過ぎなかった時代に、香川綾は栄養学部の必要性を強く主張しました。栄養学を専門とする初の4年制大学である女子栄養大学を創設し、管理栄養士の資格創設にも貢献しました。これにより、栄養学の専門家の地位を確立しました。

受賞歴と晩年

1962年に藍綬褒章、1972年には勲二等瑞宝章を受章し、1991年には文化功労者として顕彰されました。1984年にはエイボン女性大賞を受賞しています。1997年4月2日、母校である東京女子医科大学にて、98歳でその生涯を閉じました。叙・正四位、贈・銀杯一組。

論文

香川綾は、数々の学術論文を発表し、その研究成果は栄養学の発展に大きく貢献しました。

「新入学児童の栄養」『小学一年毎日の指導』(1950)
「ビタミン補給と調理(現在の日本人におけるビタミン欠乏に関する諸問題)」『ビタミン』(1955)
「生魚及び豚肉のビタミンB1の調理による損失について」『栄養と食糧』(1957)
「混合蛋白質の栄養効果について」『栄養と食糧』(1963)
「今後の調理科学について」『調理科学』(1973)
「栄養学の実践」『調理科学』(1976)
「本学における栄養クリニックについて」『日本循環器管理研究協議会雑誌』(1977)
「香川式食事法--四つの食品群点数法 (女子栄養大学創立50周年記念号)」『女子栄養大学紀要』(1983)
* 「実践栄養学」『女子栄養大学紀要』(1986)

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