香川行景

香川行景（かがわ ゆきかげ）

香川行景は、日本の戦国時代に安芸国（現在の広島県の一部）で活躍した武将です。安芸における香川氏の当主であり、有力大名であった安芸武田氏の家臣として名を馳せました。居城は安芸国の八木城（現在の広島市安佐南区）。通称は兵庫助と伝えられています。

文明17年（1485年）、香川氏当主であった香川吉景の子として生を受けました。父・吉景が隠居した後、家督を継承し、香川氏の領主となりました。彼は武田氏の重臣として主君に仕え、当時の安芸国における勢力争いの渦中に身を置くこととなります。

有田中井手の戦いでの壮烈な最期

行景の生涯における最大の出来事は、永正14年（1517年）に勃発した有田中井手の戦いでした。この戦いは、主君である安芸武田氏の当主・武田元繁が、隣接する吉川氏の所領であった有田城（現在の広島県北広島町）を攻略しようとしたことから始まりました。香川行景も武田軍の一員として、この攻撃に参加しました。

有田城主の小田信忠は、武田軍の攻撃に対し徹底的な籠城戦を展開し、必死に城を守り抜きました。城が孤立する危機が迫る中、小田氏と縁戚関係にあった吉川氏および、当時勢力を拡大しつつあった毛利氏が救援のために出兵。吉川・毛利連合軍が有田城へと駆けつけ、武田軍と対峙する状況となりました。

戦いの当初、武田軍は兵数において吉川・毛利連合軍を圧倒的に上回っており、有利な状況にあると思われました。しかし、戦端が開かれると状況は一変します。武田軍の先鋒を務めていた熊谷元直が、毛利軍との激戦の末に討ち取られてしまったのです。この事態に、総大将である武田元繁は激しく動揺し、また激昂したと伝えられています。

総大将自らが冷静さを失った結果、武田元繁は、冷静な判断力を失い、自ら先頭に立って吉川・毛利連合軍の本陣へと突撃を敢行しました。彼は又打川（またうちがわ）という川を渡河する最中に、敵から放たれた矢を受けて戦死するという壮絶な最期を遂げました。

主戦論を唱え、討死

総大将である武田元繁が討死するという未曽有の事態は、武田軍全体に大きな動揺をもたらしました。香川行景もまた、この状況を受けて一時的に戦線から離脱し、今田（現在の広島市安佐北区）の方面まで撤退しました。しかし、彼はこのまま敗走することを潔しとせず、再び敵と雌雄を決すべきだと強く主張し、徹底抗戦を訴えました。

行景の主戦論は、同じく武田氏の家臣であった己斐宗瑞（こい そうずい）に賛同を得たようです。撤退したにも関わらず、香川行景は己斐宗瑞と共に再び兵を率いて吉川・毛利連合軍へと突撃を試みました。しかし、総大将を失い混乱状態にあった武田軍は体勢を立て直すことができず、行景らの突撃も状況を覆すには至りませんでした。激しい戦闘の末、香川行景は己斐宗瑞と共に戦場で討死を遂げたのです。この有田中井手の戦いで命を落とした時、彼の年齢はわずか33歳でした。

香川行景が戦死した後、香川氏の家督は彼の弟である香川元景が継承しました。行景の討死は安芸武田氏にとって大きな痛手となり、その後の勢力衰退の一因ともなったと考えられています。

関連情報

香川行景は、1997年に放送されたNHK大河ドラマ『毛利元就』において、俳優の俵一によって演じられています。

参考文献としては、大朝町史編纂委員会が編纂した『大朝町史 上巻』（1978年、大朝町発行）にその記述が見られます。

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