香港の対外関係

香港の対外関係は、外国との関係と、中国本土との関係という二つの側面を持っています。これらの関係は、香港の政治、経済、社会に深く影響を与えています。

香港政府における対外関係

香港政府内では、政制事務局が対外関係を主に担当しています。特に、中国本土（香港政府は「内地」と呼ぶ）との関係を重視しており、様々な協力関係を築いています。一方で、諸外国との外交事務は、基本法により中央政府の管轄と定められています。そのため、外交部駐香港特派員公署が設置され、政制事務局と協力して、香港が外国や国際機関と締結する条約案を作成しています。また、律政司国際法律科が条約に関する事務を担当し、政務司司長管轄下の行政署礼賓処が海外からの来客対応や領事館への便宜供与を行っています。

中国大陸および中央政府との関係

中国本土との関係において、中華人民共和国中央政府は、香港やマカオに関する事務を扱う国務院香港マカオ事務弁公室を設置しています。この弁公室は、国務院の各部や地方政府と香港特別行政区政府との連絡や協力関係を監督・調整する役割を担っています。香港と中国本土の官庁や地方政府間の交渉や催しには、必ず同弁公室の官僚が参加し、香港に対する不当な介入を防止しています。

中央政府は、香港に以下のような出先機関を設置しています。

中央政府駐香港連絡弁公室: かつて新華通信社香港支社として知られていた機関。
外交部駐香港特派員公署: 香港に関する外交事務を処理。
人民解放軍駐香港部隊: 香港での国防を担当。

香港政府も、中国本土に以下の出先機関を設置し、政制事務局が管轄しています。

香港特別行政区政府駐北京弁事処: 中央政府との連絡のほか、香港人への支援など事実上の領事業務も行います。
香港経済貿易弁事処 (内地): 中国大陸での業務強化に伴い、政制事務局に移管されました。
駐粤(広東)経済貿易弁事処: 広東省を中心に、周辺地域の経済貿易関係を強化しています。
上海経済貿易弁事処: 上海市と周辺省の経済貿易関係を強化しています。
成都経済貿易弁事処: 四川省とその周辺地域の経済貿易関係を強化しています。

中華人民共和国本土と香港間の経済協力および協定

中国本土と香港の間では、入管や税関など、本来中央政府の管轄事項である境界管理において、香港特別行政区・広東省政府聯席会議を通じて、通行や通関の時間短縮、迅速化に関する協議が行われています。また、2003年に締結された中国本土・香港経済連携緊密化取決め（CEPA）は、香港の工商科技局と中華人民共和国商務部との間で交渉が行われました。中港間の経済関係の緊密化に伴い、香港と諸外国と同様に、租税協定に類する「処置」（按排）が締結されています。

ただし、投資協定は締結されていません。これは、中華人民共和国が、台湾との投資協定締結が両岸関係の国際化につながるとの懸念から、国内法である「台商投資保護法」を制定した背景があります。FTAに関しても同様の問題があり、中華人民共和国商務部は、CEPAはFTA類似の処置であり、FTAそのものではないとの立場を取っています。

また、犯人引渡し協定は、刑事訴訟手続きや刑罰制度の違いから、特に香港から中国本土への引き渡しにおいて、被告の人権問題が懸念されるため、未だ締結されていません。中国本土で香港で犯罪を犯した者が逮捕された場合、中国本土の裁判所で裁かれ処罰されるのが現状です。張子強事件では、香港の排他的な刑事管轄権が必ずしも成立していないのではないかという議論が起こりました。

諸外国との関係および国際機関への加盟

[香港]]特別行政区基本法は、香港が「中国香港]」の名称で、経済や社会、文化に関する国際条約の締結や国際会議への参加を認めています。[[香港は、民間航空協定、投資協定、刑事司法協力協定、犯罪者引渡し協定、租税協定など、多くの条約や協定を締結しています。これらの協定は、律政司の「公約及国際協定」ページで確認できます。国際組織の地位に関する協定や領事協定は、中華人民共和国中央政府が当事者となり、香港に適応する形式を取っています。

国際組織への加盟は、主権国家であることが参加要件ではない場合、香港が当事者となるケースと、中華人民共和国政府を通して間接的に参加するケースの2つがあります。後者の場合、中華人民共和国が当事者となり、締結した条約などが香港にも適用されます。香港政府は、中華人民共和国代表団の一員として発言力を確保することもあります。

香港の在外出先機関

香港は、海外に以下の経済貿易弁事処を設置しています。

シンガポール
シドニー
東京
ソウル
ブリュッセル: EUおよび西欧諸国を管轄。
ロンドン: イギリス、東欧、ロシア、スイス、北欧を管轄。国際海事機関（IMO）への代表も駐在。
ジュネーヴ: 国連機関やWTOなど代表部を管轄。
ニューヨーク
サンフランシスコ
ワシントンD.C.
トロント

さらに、香港貿易発展局の事務所も海外の主要都市に設置されています。

香港が加盟する主な国際組織

アジア開発銀行
アジア太平洋経済協力（APEC）
国際決済銀行（BIS）
世界気象機関（WMO）：領域としての加盟
世界貿易機関（WTO）：独立関税領域として正式加盟。GATTには1986年、イギリスのスポンサーシップにより加盟。

中華人民共和国が加盟し、香港にも条約・協定を適用する主な国際組織

ESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会)
FAO(国連食糧農業機関)
IAEA(国際原子力エネルギー機関)
ICAO
ICPO
ILO(国際労働機関)
IMF(国際通貨基金)
ITU(国際電気通信連合)
世界銀行
万国郵便連合
* WHO（世界保健機関）

これらの国際組織への参加は、香港の国際的な地位を維持し、グローバルな課題に取り組む上で重要な役割を果たしています。

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