香港式ミルクティー

香港式ミルクティーとは

香港式ミルクティー（広東語: 港式奶茶）は、濃く淹れた紅茶にエバミルクを加えて風味をつけた、香港独特の飲み物です。その濃厚な味わいと滑らかな口当たりは、香港の喫茶文化に欠かせない存在となっています。

特徴

一般的なミルクティーとは異なり、香港式ミルクティーは、紅茶とエバミルクが混ぜられた状態で提供されます。濃く抽出された紅茶は香りが高く、若干の渋みがありますが、エバミルクがこれをまろやかにし、濃厚な風味を生み出します。牛乳由来の成分が多いため、ロイヤルミルクティーに近い風味を持つと言えるでしょう。砂糖は、客が好みに合わせて加えますが、テイクアウトの場合は、最初から加えられているのが一般的です。

製法

香港式ミルクティーは、数種類の茶葉をブレンドし、大きなポットでまとめて抽出します。抽出には、木綿のろ過袋が用いられ、これにより茶葉が綺麗に濾され、滑らかな口当たりが実現します。このろ過袋がストッキングに似ていることから「絲襪奶茶（シーマックナイツァー）」と呼ばれることもあります。使用後のろ過袋は紅茶の色に染まり、独特の風合いを醸し出します。

抽出された紅茶は、ポットで保温され、注文が入るとカップやコップに注がれます。その後、たっぷりのエバミルクを加えて提供されます。エバミルクのブランドにもこだわりを持つ店も多く、風味の違いを楽しむことができます。

歴史

香港式ミルクティーは、香港がイギリスの植民地であった時代に、イギリスのミルクティーが持ち込まれたことが起源とされています。当初は、新鮮な牛乳が入手困難だったため、保存性のあるコンデンスミルクやエバミルクが代用されました。20世紀に入り、大衆的な喫茶店や屋台で提供されるようになり、一般の人々にも広く普及しました。特に、蘭芳園という喫茶店が始めた、布のろ過袋を用いた濃厚なミルクティーは、他の店にも広まり、香港独特のミルクティー文化を形成しました。

香港における喫茶文化

香港式ミルクティーは、香港の喫茶文化において重要な位置を占めています。茶餐廳（チャーチャーンテーン）と呼ばれる大衆的な飲食店で広く提供され、地元の人々にとって日常的な飲み物です。朝食時には、目玉焼きやパンなどと共に楽しまれることが多いです。厚手のカップやグラスで提供されることが一般的です。

評価基準

香港の人々は、香港式ミルクティーの評価において、味だけでなく、香りと滑らかさを重視します。「香滑（ヒョンワーッ）」という形容詞は、美味しいミルクティーを表現する言葉としてよく使われます。特に、滑らかさは重要な要素であり、クリーミーな口当たりが求められます。この滑らかさを生み出すエバミルクは、ブランドや使用量が重要視され、飲み終えたカップに乳脂肪が残るほど濃厚なものが好まれる傾向にあります。

バリエーション

香港式ミルクティーには、様々なバリエーションが存在します。

茶走（チャーザウ）: エバミルクと砂糖の代わりに、加糖練乳を加えたミルクティーです。より甘く濃厚な味わいが特徴で、昔から親しまれている飲み方です。
アイスミルクティー: 亜熱帯気候の香港では、アイスミルクティーも人気です。クラッシュアイスと共に提供されるのが一般的で、ホットよりも少し値段が高くなります。昔ながらの、氷を入れずに冷やしたアイスミルクティーを好む人もいます。
鴛鴦茶（えんようちゃ）: 香港式ミルクティーにコーヒーを加えたものです。香港独特の飲み物で、ミルクティーとコーヒーの両方の風味を楽しむことができます。
テーC: シンガポールにおけるエバミルク入りミルクティーで、ネスレのカーネーションブランドのエバミルクを使用していることを指します。香港では、この呼び方はしません。
* タピオカパール入りミルクティー: 台湾発祥のタピオカティーは、エバミルクを用いて作られることがあります。アジアを中心に人気を集めています。

まとめ

香港式ミルクティーは、その独特な製法と味わい、そして歴史的な背景から、香港の文化を象徴する飲み物の一つです。濃厚で滑らかな口当たりは、多くの人々に愛され、日々の生活に欠かせない存在となっています。

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