馬希崇

馬希崇（ば きすう）：楚の終焉を招いた王

馬希崇は、五代十国時代の楚の第6代にして最後の王です。武穆王・馬殷の子として生まれました。

王位簒奪と混乱の幕開け

天福12年（947年）、文昭王・馬希範が亡くなると、馬希崇は兄弟の中で最年長であった馬希萼を排除し、弟の馬希広を擁立しました。しかし、これは父王が定めた兄弟相続の遺訓に反するものであり、馬希崇自身は馬希萼の擁立を企てていました。

乾祐3年（950年）、馬希萼は原住民勢力と結託して馬希広を攻撃、同時に南唐に臣下の礼を取り、援軍を要請しました。馬希広は討伐軍を派遣しますが大敗。馬希萼は順天王を自称し、潭州を包囲して守備隊に投降を促し、ついに占拠しました。捕らえられた馬希広は、後に自殺を命じられています。

王位に就いた馬希萼は、政務を馬希崇に一任しました。しかし、馬希崇もまた部下に政務を任せるなど、楚の国内政治は混乱を極めました。さらに、兵士への恩賞も乏しかったため、軍の離反を招きました。

楚の滅亡と馬希崇の末路

保大9年（951年）、徐威らが反乱を起こし、馬希萼を衡山県に軟禁。馬希崇が王位を簒奪する形で即位しました。しかし、即位後の馬希崇は酒色に溺れ、民心を失う統治を行いました。楚国内では派閥抗争が激化し、南唐も楚への進出を狙うなど、政治情勢はさらに悪化の一途をたどりました。

徐威らは馬希崇を殺害し、国内の建て直しを図りましたが、政変を察知した馬希崇は南唐に保護を求めました。南唐はこれに応じ、辺鎬（へんこう）を進駐させました。馬希崇は家族と共に南唐に投降し、ここに楚は滅亡しました。

楚の滅亡後、馬氏は南唐に遷され、馬希崇は永泰軍節度使に封じられ、揚州に居住しました。しかし、保大14年（956年）に後周が南唐を攻撃し、淮南地域を占拠すると、馬氏は後周の都である開封に遷され、馬希崇は羽林統軍に任じられました。

この記録を最後に、馬希崇は史書から姿を消します。彼の晩年については、詳しいことは分かっていません。しかし、楚の滅亡という歴史的な出来事において、馬希崇が果たした役割は決して小さくありません。

馬希崇は、その無能さと失政によって楚を滅亡に導いた人物として、歴史に名を残しています。

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