馬車道大津ビル

馬車道大津ビルは、神奈川県横浜市中区南仲通4丁目に位置する、歴史的価値の高い近代建築物です。この建物は、1936年（昭和11年）に「東京海上火災保険ビル」として竣工しました。その後、「協同飼料研究所」としての利用期間を経て、現在の「馬車道大津ビル」という名称になりました。

馬車道大津ビルの周辺環境も、歴史を感じさせる建造物が点在しています。本町通り側には、1929年竣工の旧富士銀行横浜支店が隣接しており、馬車道を挟んだ斜め向かいには、1904年竣工の神奈川県立歴史博物館が建っています。これらの建物と並び、馬車道大津ビルもこのエリアの歴史的な景観を形成する重要な要素となっています。

建築様式としての特徴は、一見するとシンプルなファサードの中に、巧みに装飾タイルが用いられている点です。これにより、ゴシック建築のような独特の雰囲気が醸し出されています。特筆すべきは、その保存状態の良さです。建物の内部、外部ともに、建築当時の状態が良好に維持されており、歴史的建築物としての価値をさらに高めています。構造は地上4階、地下1階建てで、地上階は貸オフィスとして、地下階はギャラリーとして活用されています。

馬車道大津ビルは、2000年度に横浜市認定歴史的建造物として正式に認定されました。この認定は、建物の歴史的、文化的価値が認められた証と言えるでしょう。建物の設計を手掛けたのは、建築家の木下益治郎（または木下益次郎）です。木下益治郎は、東京・丸の内の東京海上ビルディング旧館や、神戸市の神港ビルなど、数々の著名な建築物を手掛けた実績を持つ建築家です。

参考文献として、日本建築家協会関東甲信越支部神奈川地域会まちづくり保存研究会が編集した『横浜近代建築 関内・関外の歴史的建造物』（2012年11月29日発行、17頁）が挙げられます。この文献からも、馬車道大津ビルの歴史的価値と建築的な特徴を詳細に知ることができます。

馬車道大津ビルは、その歴史的な背景、建築様式、そして良好な保存状態から、横浜の歴史を語る上で欠かせない存在と言えるでしょう。今後も、その歴史的価値を継承し、地域社会に貢献していくことが期待されます。

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