駆け込み需要

駆け込み需要とは？

消費者の不利益となる事態（値上げ、販売終了など）を前に、商品需要が短期的に急増する現象を「駆け込み需要」といいます。これは、消費者が将来的な不利益を回避するために、事前に商品を購入する行動によって起こります。別名「先食い需要」とも呼ばれ、様々な要因で発生します。

駆け込み需要の主な原因

1. 値上げ

消費税増税やガソリン価格高騰、特定商品の値上げといった、消費者の支出増加につながる発表や決定は、駆け込み需要の大きな要因となります。例えば、過去には消費税の導入（1989年）、増税（1997年、2014年、2019年）、たばこ税増税（2010年）、軽自動車税増税（2015年）などが、直前に駆け込み需要を引き起こしました。また、2022年のロシアによるウクライナ侵攻も、原油価格の高騰などを通して駆け込み需要の一因となりました。さらに、消費者にとって不利益となる制度の施行や、特典の縮小・廃止も駆け込み需要につながります。家電リサイクル法施行（2001年）、エコカー補助金終了（2010年）などがその例です。

2. 販売終了

商品の販売終了、生産中止、サービス終了などが発表されると、購入できなくなる前に商品を購入しようとする動きが活発化し、駆け込み需要が発生します。

具体的な例として、ファミリーコンピュータ ディスクシステムの書き換えサービス終了（2003年）、スバル・サンバーの生産終了（2012年）、三菱・ランサーエボリューションXの生産終了（2016年）、パイオニアのレーザーディスクプレーヤー生産終了（2009年）、ソニーのミニディスク生産終了（2011年、2013年）、羽衣文具のチョークの自主廃業（2015年）、吉野家の牛丼販売休止（2004年～2008年）、CHAGE and ASKAの楽曲販売一時停止などが挙げられます。また、ニンテンドー3DSやWiiの修理サービス終了（2021年、2020年）も、駆け込み需要を引き起こした事例です。

3. 新規購入・買い替えの必要性

アナログ放送終了（2011年）、Windows XPサポート終了（2014年）など、特定商品の新規購入や買い替えが必要となる事態も駆け込み需要の要因となります。これらの発表後、該当商品への需要が急増する現象が見られました。

4. 品薄

生産・流通トラブル、需要過多による供給不足、原料不足などによる生産・販売停止なども、駆け込み需要を発生させます。東日本大震災直後のガソリン不足や、ロシアのウクライナ侵攻後のトルコへの航空券の高騰などがその例です。買い占めに発展することもあり、店舗側が購入数量制限を設けるケースも見られます。

駆け込み需要の経済効果

駆け込み需要は、将来の需要を前倒ししたものであり、長期的に見ると相殺されると考えられる一方、完全に相殺されないケースも多く、行動ファイナンスの分野で研究されています。増税のように消費者の購買力を低下させるケースでは、長期的に需要を減少させる効果も期待できます。一方、キャンペーンなどでは、追加的な需要を生み出す効果も期待できるでしょう。

関連用語

買い占め
転売ヤー
* 需要と供給

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