高仁親王

高仁親王

高仁親王（すけひとしんのう）は、寛永3年11月13日（1626年12月31日）に後水尾天皇の第二皇子として誕生しました。母は中宮である徳川和子。徳川和子は、江戸幕府二代将軍・徳川秀忠の娘にあたります。

生涯

高仁親王は、将軍徳川秀忠の外孫という血筋から、将来の天皇として大きな期待を寄せられていました。徳川家の血を引く天皇の誕生は、朝廷と幕府の関係をより強固なものにすると考えられ、早くから皇位を継承する「儲君」として位置づけられます。寛永6年（1629年）には、後水尾天皇から譲位を受け、天皇に即位する予定でしたが、その前年の寛永5年6月11日（1628年7月12日）に、わずか3歳という若さで薨去されました。

高仁親王の突然の死は、朝廷と幕府に大きな波紋を広げました。江戸幕府は、かつて正親町天皇の儲君であった誠仁親王（後陽成天皇の父）が、天皇に即位することなく亡くなった先例に倣い、同様の形式で葬儀を行うように朝廷に伝えました。しかし、幕府からの指示が京都に伝わる前に、高仁親王は当時の皇室の慣例に従い、数え年で7歳に満たない皇族は葬儀を行わないというしきたりにのっとり、薨去の翌日には般舟院に埋葬されました。

当時、中宮和子は新たな命を宿していました。しかし、幕府は、この頃に表面化し深刻化していた紫衣事件を理由に、後水尾天皇が譲位することを阻止しようと画策します。そのために、和子が9月27日に出産した若宮（後の皇子）を、八条宮智仁親王の養子に出し、皇位継承の候補から外さざるを得ない状況を作り出しました。しかし、この皇子もまた、生後わずか9日で夭折するという悲劇に見舞われます。

幕府の度重なる干渉にもかかわらず、後水尾天皇は翌寛永6年11月8日に、和子所生の女一宮（後の明正天皇）への譲位を強行しました。これは、幕府の意向に反するものであり、後水尾天皇の強い意志を示すものでした。明正天皇は、江戸時代を通じて唯一の女性天皇として即位することになります。

高仁親王の短い生涯は、朝廷と幕府の関係、皇位継承の問題、そして紫衣事件といった、当時の政治情勢を色濃く反映しています。彼の死は、その後の皇位継承に大きな影響を与え、明正天皇の即位へと繋がっていきました。



参考文献
* 野村玄『日本近世国家の確立と天皇』（清文堂、2006年） ISBN 978-4-7924-0610-3 第三部第一章「寛永期の政治過程と女帝明正天皇」

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