高倉永則

高倉永則：軍人、政治家、そして華族の生涯

高倉永則（1864-1947）は、明治から昭和初期にかけて活躍した稀有な人物です。陸軍軍人としてのキャリア、貴族院議員としての政治活動、そして数々の社会的地位を兼任したその生涯は、激動の時代を生き抜いた一人の貴族の軌跡を鮮やかに示しています。

華族の出自と軍人としてのキャリア

1864年、京都で侍従・高倉永祜の長男として生まれた高倉永則は、慶応4年（1868年）、父の死去により家督を相続、1884年には子爵に叙爵されました。華族の身分を継承した彼は、その後陸軍士官学校に進学。明治21年（1888年）、歩兵少尉に任官し、軍人としての道を歩み始めます。

歩兵第20連隊での小隊長、大隊副官、中隊長を経て、歩兵第39連隊大隊長、京都連隊区司令官など要職を歴任。大正3年（1914年）には歩兵大佐に昇進しました。しかし、大正5年（1916年）には待命となり、翌年には予備役に編入されています。軍人としての華々しい経歴は、ここで一旦幕を閉じます。

貴族院議員としての政治活動

軍を退いた後、高倉永則は新たな舞台へと進出します。大正9年（1920年）、貴族院子爵議員補欠選挙で当選を果たし、政界に足を踏み入れたのです。貴族院議員として、研究会に所属し、昭和7年（1932年）まで2期にわたって活動しました。

多様な社会活動と晩年

政治活動以外にも、高倉永則は様々な社会活動に携わっていました。大礼使典儀官、大喪使祭官、大礼事務嘱託（衣文奉仕）といった宮廷関係の職務の他、華族会館京都分館長、一徳会会長、小楠公会会長、大日本武徳会本部理事など、多岐にわたる役職を歴任。その活動は、華族社会のみならず、日本の社会全体にまで及んでいます。

高倉永則の家族構成も注目に値します。妻は直子と銑子の二人がおり、子供たちも華族や名家に嫁ぎ、その一族は社会の上層部に大きな影響力を持っていました。弟には、土師神社（現道明寺天満宮）宮司を務めた南坊城良興や、東京文理科大学名誉教授となった高倉卯三麿らがいます。

昭和22年（1947年）、高倉永則は73歳でこの世を去りました。彼の生涯は、華族の特権階級に生まれたこと、軍人としての経験、政治家としての活動、そして多様な社会活動という、複雑で多面的なものでした。しかし、それら全てが、激動の時代を生き抜き、日本の近代化に貢献した一人の人物像を描き出していると言えるでしょう。彼の残した足跡は、現代社会においても、歴史的、社会的な考察の対象として、重要な意味を持っています。

参考文献

陸軍省編『陸軍現役将校同相当官実役停年名簿 大正3年7月1日調』陸軍省等、1914年
人事興信所編『人事興信録 第14版 下』人事興信所、1943年
『貴族院要覧（丙）』昭和21年12月増訂、貴族院事務局、1947年
山崎正男編『陸軍士官学校』秋元書房、1969年
『神道人名辞典』神社新報社、1986年
衆議院・参議院編『議会制度百年史 - 貴族院・参議院議員名鑑』大蔵省印刷局、1990年
* 霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧[[華族家系大成]] 下巻』霞会館、1996年

もう一度検索