高垣善一

高垣善一：和歌山市の発展に尽くした市長の生涯

高垣善一（たかがき ぜんいち）は、1898年（明治31年）に和歌山県有田郡田殿村（現在の有田川町）で生まれ、1966年（昭和41年）に68歳で没した政治家です。彼は、和歌山市長として戦後の復興と都市の発展に大きく貢献しましたが、晩年には汚職事件で起訴されるという波乱万丈な人生を送りました。

生い立ちと初期のキャリア

高垣は、父の事業失敗により、1912年（明治45年）から地元の郵便局に勤務しました。その後、南海鉄道、鉄道院と職を転々としながら、1925年（大正14年）からは中村愛三郎法律事務所に勤務し、関西大学で法律学や政治学を学びました。彼は、1932年（昭和7年）に専門部を、1935年（昭和10年）に法文学部法律学科を、1939年（昭和14年）には経商学部経済学科を卒業しました。

政治家としての歩み

大学在学中の1933年（昭和8年）から政治活動を始め、和歌山市会議員に初当選して以来、3期連続で市会議員を務め、副議長や議長も歴任しました。1939年（昭和14年）には和歌山県議会議員に初当選し、1946年（昭和21年）には参事会員に選ばれています。

戦後、初の公選による和歌山市長選挙に立候補し、初当選を果たしました。市長として、上水道などのライフラインの回復や文化厚生施設の充実、そして大都市構想の実現に尽力しました。特に、1950年代には周辺14ヶ町村との大合併を主導し、1958年（昭和33年）には戦災で焼失した和歌山城を再建するなど、和歌山市の発展に大きく貢献しました。

汚職事件と晩年

しかし、1963年（昭和38年）9月11日、建設省近畿地方建設局の汚職事件に関与したとして、収賄罪の容疑で逮捕されました。高垣は、和歌山市内の道路工事の指名競争入札で便宜を図り、謝礼として現金を受け取ったことを認めたと報じられました。その後、起訴され、公判中に「汚職市長リコール運動」も起こりました。

高垣は、自身が起訴されたのは政敵による政治謀略であると主張しましたが、公判中の1966年（昭和41年）5月31日に脳出血のため急逝しました。死後、その功績が認められ、正五位勲三等に叙せられ、和歌山市名誉市民となりました。

人物像と評価

高垣善一は、「和歌山の実力市長」と呼ばれ、その手腕は高く評価されていました。1967年（昭和42年）の和歌山県知事選への出馬も噂されていましたが、汚職事件と急逝により、その構想は実現しませんでした。彼の生涯は、地方政治の光と影を象徴するものとして、今も語り継がれています。

参考文献

和歌山市名誉市民 高垣善一
関西大学を築いた人びと 高垣善一

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