高山繁文

高山繁文：江戸時代の名家老にして俳人

高山繁文（たかやま しげふみ）は、慶安2年（1649年）に生まれ、享保3年（1718年）に没した江戸時代の人物です。彼は甲斐谷村藩（現在の山梨県都留市）と武蔵川越藩（現在の埼玉県川越市）において国家老を務め、藩政に大きく貢献しました。また、俳人としても知られ、「麋塒（びじ）」の俳号で多くの作品を残しています。

生涯

繁文は、甲斐国都留郡谷村で、秋元家の国家老である高山孝繁の次男として生まれました。幼名は彦四郎と名乗り、後に繁文と改めます。高山家は代々秋元家に仕え、家老職を務める家柄でした。また、熱心な日蓮宗の信徒でもありました。

幼少の頃から江戸で谷村藩主・秋元喬知に仕え、万治3年（1660年）に兄が亡くなると、500石の家督を継ぎました。寛文12年（1672年）には24歳で家老に就任し、その卓越した手腕を発揮して城代となり、最終的には1200石の国家老にまで昇進しました。

宝永元年（1704年）に、藩主の秋元喬知が川越藩主に転封となると、繁文もこれに従い川越へ移ります。当時の社会は、元禄大地震や宝永地震、富士山の宝永大噴火といった天変地異が相次ぎ、人々の心は不安に満ちていました。また、赤穂浪士の討ち入りなど騒然とした世相でもありました。

このような状況下で、繁文は喬知の命を受け、甲斐国から多くの職人を連れてきて、養蚕の奨励や絹織物の技術指導を行いました。城代家老であった岩田彦助とともに、川越藩においてその才能を高く評価され、その結果、袴地の川越（絹）平や羽織地の川越斜子といった地場産業が生まれました。これらの特産品は江戸をはじめとする各地に搬出され、川越藩の重要な財源となりました。さらに、甲州柿の栽培や養魚などの農閑余業も指導し、農家の生活基盤の安定にも貢献しました。川越藩の殖産興業において、繁文の功績は非常に大きいと言えるでしょう。

正徳4年（1714年）、長年にわたり仕えた藩主・秋元喬知が亡くなると、繁文は殉死を決意し、喬知の法要後に出家して「幻世」と号しました。その後は、喬知の冥福を祈りながら余生を送りました。喬知が亡くなってから5年後の享保3年（1718年）、繁文は70歳でその生涯を閉じました。墓は埼玉県川越市石原町の本応寺にあり、埼玉県指定の旧跡となっています。墓碑には「融心院幻世常爾居士」と刻まれています。

俳人としての活動

俳人としては「麋塒（びじ）」の号を用いていました。江戸への出府の際に松尾芭蕉の門人となり、俳諧の道に入りました。天和2年（1682年）に発生した八百屋お七の火事で芭蕉庵が焼失した際には、芭蕉とその弟子の芳賀一晶を甲斐・谷村に招き、一冬を過ごさせました。この時の芭蕉は39歳でした。この甲斐流寓の様子は、宝井其角の『枯尾華』に詳しく記されています。貞享元年（1684年）秋から翌年にかけて、芭蕉は『野ざらし紀行』を著し、その帰路に谷村に立ち寄り、繁文と再会を果たしています。都留市では、この縁にちなんで、毎年「都留市ふれあい全国俳句大会」が開催されています。

主な句集

* 『真澄の鏡』

この他にも、『武蔵曲』、『虚栗』、『続虚栗』、『白根嶽』、『一字幽蘭集』などに、繁文（麋塒）の句が収録されています。

高山繁文は、江戸時代という激動の時代において、藩政に尽力し、殖産興業を推進するとともに、俳人としても才能を発揮した人物でした。彼の功績は、現代においても高く評価されています。

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