養魚

養魚とは

養魚は、広義には魚を飼育して増やすことを指しますが、ここで取り上げる養魚は、古代中国から伝わる伝統的な養殖法を指します。特に、この養魚は「施肥混養」とも呼ばれ、現在の中華人民共和国においても、養蚕業や稲作などの農業と組み合わせて行われています。

起源

養魚の歴史は古く、殷（紀元前1600年頃 - 紀元前1046年）時代の遺跡から発掘された甲骨文字の記録により、紀元前1150年頃（約3000年前）にまで遡ることがわかっています。当初は養蚕と兼業し、不要となった蚕の蛹を餌とするコイの「単養」が行われていたと考えられています。養殖技術を産業として導入したのは、春秋戦国時代の越の王・勾践に仕えた政治家・范蠡であるとされ、彼は魚の養殖に関する世界最古の書物『養魚経』を著しています。

唐代における改良

唐の時代になると、皇帝・李淵が自身の姓である「李」と「鯉」が同音であることから、「鯉に対する冒涜は皇帝に対する冒涜である」とし、コイの養殖・捕獲・売買・食を一切禁止しました。この厳しい禁令により、コイを捕らえた者は三十杖の罪、食した者は死刑という重い刑罰が科せられました。

この禁令をきっかけに、民衆はコイの代わりに食用魚として、アオウオ・ソウギョ・コクレン・ハクレン（いずれも中国原産のコイ科の野生種）に注目しました。コイの単養で培われたノウハウを応用・改良し、これら四種の淡水魚を同時に飼育する合理的な方法が確立されました。この改良された養魚は各地に広まり、コイに代わる食用魚として、上記四種があらゆる層に受け入れられるようになりました。これらの淡水魚が「四大家魚」と呼ばれるようになった所以でもあります。

唐の時代には、ソウギョ・アオウオ・コクレン・ハクレンにコイを加えて「五大家魚」と呼んでいた時期もありましたが、上記の理由からコイが除外され、「四大家魚」となりました。

養魚の仕組み

養魚では、まず「四大家魚」の稚魚を、成育可能な環境（池沼や河川など）に放流します。放流後、各魚に直接的な飼料を与えることはありません。刈り取った植物や屎尿を利用し（屎尿を池沼に撒きプランクトンを発生させてから稚魚を放流したり、稲作と兼業するなど、環境や地域によって異なります）、環境内の生態系を利用します。各魚の食性と食物連鎖は以下の通りです。

1. ソウギョ：水草や水辺植物を好んで食べます。
2. タニシなど：ソウギョの排泄物を食べます。
3. アオウオ：タニシなどの底生生物を食べます。
4. 植物プランクトン：屎尿を肥料として繁殖します。
5. 動物プランクトン：植物プランクトンを餌に繁殖します。
6. ハクレン：植物プランクトンを食べます。
7. コクレン：動物プランクトンを食べます。

このように、養魚は各魚種の食性を巧みに利用し、互いに補完し合いながら、効率的な養殖を可能にしています。

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