高嶋米峰

高嶋米峰：社会教育家、仏教学者、そして宗教家としての生涯

高嶋米峰（1875-1949）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の社会教育家、仏教学者、そして宗教家です。東洋大学第12代学長を務めたことでも知られ、その活動は教育、宗教、社会改革と多岐に渡ります。新潟県に生まれ、哲学館（後の東洋大学）を卒業後、井上円了の助手として『東洋哲学』編集に携わるなど、学術研究にも貢献しました。

ジャーナリストとしての経験や教育者としての活動を経て、高嶋は独自の道を歩み始めます。ユニテリアン教会に通い、キリスト教思想に影響を受けた彼は、仏教の刷新を目指す新仏教運動を提唱。境野哲らとともに新仏教同志会を結成し、禁酒、禁煙、廃娼運動などを展開しました。運動の機関誌『新仏教』を創刊するなど、積極的な活動で時代の変革に挑みます。

出版活動にも熱心に取り組み、小石川原町に鶏声堂書店を開設。丙午出版社を設立し、数多くの哲学・宗教書を世に送り出しました。その著作数は60冊以上に及び、『聖徳太子正伝』は天皇皇后両陛下に献上されるなど、皇室とも深い関わりを持ちました。聖徳太子を研究対象とした著書も多く、その思想や業績に深い関心を寄せていたことが伺えます。

東洋大学との関わりも深く、同大学卒業後、教員、財団維持員を経て学長に就任。しかし、勤労動員問題を巡る軋轢により、短い期間で退任することになります。戦時中は日本文学報国会評論随筆部会長を務めるなど、時代状況に翻弄されながらも、持ち前の信念を貫き通しました。

高嶋米峰の活動は、教育・宗教・社会運動の枠にとどまりません。漢詩を趣味とするなど教養にも優れ、『禁酒の徳』と題するレコードを発売するなど、禁酒運動にも尽力しました。社会教育家として著名な高島平三郎氏と混同されることもあったようですが、両者の関係は良好だったと言われています。

晩年は空襲により自宅を焼失し、カルピス社長の三島海雲氏に援助を受けながら生活を送りました。1949年、肝嚢胞のため逝去。その生涯は、激動の時代を生き抜き、多様な分野で活躍した稀有な人物像を私たちに示しています。

主な著書

高嶋米峰は多方面にわたる著作を残しており、その内容は仏教思想、社会問題、教育論など多岐にわたります。代表的な著書としては『聖徳太子正伝』、『一休和尚伝』、『理想的商業』などがあり、これらは現代においても高い価値を持つ重要な文献として認識されています。学術論文や講演録、共著なども多数発表しており、その著作活動の活発さが伺えます。

高嶋米峰の業績と現代への影響

高嶋米峰の生涯と業績は、単なる個人の活動にとどまりません。彼の活動は、近代日本の社会変革、仏教界の近代化、そして教育の発展に大きく貢献しました。新仏教運動への参加や社会運動への取り組みは、現代社会における宗教の役割や社会貢献を考える上で重要な示唆を与えてくれます。また、多様な著作を通して提示された思想は、現代の人々の生き方や社会を考える上で示唆に富むものです。高嶋米峰の生涯と業績は、現代社会においても、多くの学びと示唆を与え続けるでしょう。

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