高慢と偏見 (1940年の映画)

1940年版『高慢と偏見』：ハリウッド黄金期の傑作

1940年公開のアメリカ映画『高慢と偏見』（原題: Pride and Prejudice）は、ジェイン・オースティンの不朽の名作を映画化した作品として知られています。同小説を原作とした舞台劇の脚本を基に、オルダス・ハクスリーという当時既に名声を確立していた作家が脚色に参加したことで、高い完成度を誇る映画となりました。

監督を務めたのはロバート・Z・レナード。主演は、イギリス出身の演技派俳優グリア・ガースンとローレンス・オリヴィエという、当時を代表するスター俳優が務めました。特に、エリザベス・ベネットを演じたガースンは、当初主演の予定だったノーマ・シアラーに代わって抜擢され、見事にオースティンの描くヒロイン像を体現しています。ダーシー役のオリヴィエも、作品に深みと重厚感を与えています。

豪華なキャスト陣に加え、製作はハント・ストロンバーグ、音楽はハーバート・ストサート、撮影はカール・フロイントなど、ハリウッドを代表するスタッフ陣によって制作されました。美術監督はセドリック・ギボンズ、装置はエドウィン・B・ウィリス、衣裳はエイドリアンとジャイル・スティールが担当し、細部に至るまでこだわり抜かれた、まさにハリウッド黄金期の技術とセンスが凝縮された作品となっています。

ベネット夫人役にはメアリー・ボーランド、キャサリン・デ・バーグ役にはエドナ・メイ・オリヴァー、そしてジェイン、リディア、キャロライン、シャーロット、キティ、コリンズ、メアリー、チャールズ・ビングリーといった主要な登場人物を、モーリン・オサリヴァン、アン・ラザフォード、フリーダ・イネスコート、カレン・モーリー、ヘザー・エンジェル、メルヴィル・クーパー、マーシャ・ハント、ブルース・レスターといった実力派俳優たちが演じきりました。

この映画版『高慢と偏見』は、ジェイン・オースティンの小説を初めて映画化した作品であり、後のテレビシリーズや2005年のキーラ・ナイトレイ主演の映画版など、数々のリメイク作品を生み出すきっかけとなりました。日本での劇場公開はありませんでしたが、2006年にパブリックドメインとしてDVDが発売され、広く一般に認知されるようになりました。アカデミー賞では美術賞を受賞するなど、その高い芸術性も高く評価されています。

1940年代のハリウッド映画特有の洗練された映像美、そして名優たちの熱演によって、オースティンの描く複雑な人間関係や社会風刺が鮮やかに表現されています。現代の観客が見ても十分に楽しめる作品であり、時代を超えた魅力を持つ不朽の名作として、今後も多くの人々に愛されることでしょう。本作品は、単なる小説の映画化にとどまらず、ハリウッド黄金期の映画制作技術と、名優たちの演技力が融合した、まさに芸術作品と言えるでしょう。その歴史的、文化的価値も高く、映画史に残る重要な作品の一つです。

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