高木正得

高木 正得の生涯と業績

高木正得（たかぎまさなり、1894年1月20日 - 1948年11月5日）は、日本における貴族院議員であり、著名な昆虫学者でした。彼の父は旧河内丹南藩の最後の藩主である高木正善であり、その影響を受けて育ちました。正得は大学で昆虫学や寄生虫学を学び、その後、東京帝国大学の卒業を果たしました。

学問の道と政治活動

1920年2月、父の死により正得は家督を相続し子爵の称号を得ました。彼は1922年に東京帝国大学理学部動物学科を卒業後、大学院に進みました。1947年の貴族院廃止まで、彼は貴族院の議員として活動し、その間に司法参与官も務めました。これらの議員活動を通じて、彼は自身の専門とする昆虫学の知識を政治の場でも活かすために努力しました。

研究と人生の転機

正得は昆虫、特にチョウやカミキリムシの研究に注力していましたが、昭和初期には秋田県の官民共有林の払い下げを巡る事件に関与し、詐欺的行為があったとされます。この出来事は彼の人生に影を落とし、結果として名古屋に移住せざるを得なくなったと言われています。名古屋では経済的に厳しい状況にあり、時には風船売りで生活を支えていたと伝えられています。

戦後の苦悩と失踪

戦後、高木は財産税を支払えず、自宅を物納することになり、さらに皇室の外戚という背景がなければ、仕事を探すのも難しい状況に陥りました。渋谷区の関東女子高等学校に奉職した彼ですが、1948年7月には「呉れゞゝも捜してはいけません。無駄です。自然に融合して還元するのみ」という内容の遺書を残し、昆虫採集用の青酸カリを携帯して失踪しました。この失踪は、研究資料や標本の戦災での喪失、そして華族制度廃止による絶望が原因と考えられています。

最期の消息

1948年11月1日、彼は奥多摩の雲取山中で白骨死体として発見されました。考えられているのは、彼の死因は縊死であり、思い出の地である奥多摩での自らの終わりを選んだのかもしれません。この場所は、彼がかつて昆虫採集に訪れたことが多く、特別な意味を持っていたと思われます。

家族と親族

高木正得の家族は、その後の世代にわたって重要な地位にありました。彼の妻・邦子の父は入江為守で、弟は昭和天皇の侍従長を務めた入江相政です。また、正得の長女・衣子の夫が家督を相続し、他の娘たちも著名な家に嫁いで行きました。彼の甥である高木正征は、1920年代に陸上選手として名を馳せ、日本記録を樹立した選手となりました。

栄典

1941年には勲三等瑞宝章を受章するなど、その功績も評価されていました。高木正得の業績や彼の人生は、科学と政治の交差点における希有な存在を象徴しています。彼の悲劇的な最期は、その功績とともに今なお語り継がれています。

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