高松市立中央球場

高松市立中央球場

高松市立中央球場は、香川県高松市の中心部に位置し、かつて存在した市営の野球場です。太平洋戦争中の空襲で焦土と化した高松市において、戦災復興のシンボルとして計画・建設され、多くの市民に親しまれましたが、施設の老朽化や新たな県営球場の整備に伴い、1982年限りでその歴史に幕を下ろしました。

歴史

高松市中心部は、第二次世界大戦中の高松空襲により壊滅的な被害を受けました。終戦後、市は都市の再生を図るため、戦災復興事業として市街地の区画整理に着手。その中で、番町地区に都市公園用地が確保されました。当時、市内に娯楽施設が不足しており、街に賑わいを取り戻すため、この地に野球場が建設されることが決定しました。

建設にあたっては、市民による勤労奉仕や資材提供といった多大な協力が得られました。特に、地元の高校野球部員たちが、空襲で生じた大量の戦災残土を運び、スタンド造成に貢献したエピソードは、復興への強い願いを象徴しています。こうした市民の熱意と協力により、野球場は1947年5月1日に完成・開場を迎えました。

開場以来、中央球場はアマチュア野球の中心地として、高校野球や社会人野球の公式戦が数多く開催されました。また、プロ野球公式戦も誘致され、多くの野球ファンが熱戦に声援を送りました。1953年には一部改修が行われています。かつては、後にプロ野球界で活躍する中西太氏や穴吹義雄氏といった香川県出身の名選手たちも、この球場で技を磨きました。中央球場は、単なるスポーツ施設としてだけでなく、戦災からの復興を象徴する場所として、市民の心の支えとなっていたのです。

中心市街地という立地から、後年には周辺に高層ビルが建ち並びました。高校野球などの試合時には、仕事の合間にビルの窓から観戦する人の姿も多く見られました。しかし、フィールド自体は手狭であり、外野にはスタンドがなく、場外への打球を防ぐためにフェンスが高く設定されていましたが、プロの強打による打球はしばしばフェンスを越え、球場外の幹線道路にまで飛び出すこともありました。

施設の老朽化が進んだこと、そして香川県が市内西郊の生島町に新たな県営野球場（現在の香川県営野球場、オリーブスタジアム）の整備を計画したことから、中央球場はその役割を終えることとなりました。最後の公式戦は、1982年4月に行われた第35回春季四国地区高校野球香川県代表決定戦でした。試合終了後に行われた閉場セレモニーでは、県下の高校野球部員たちがフィールドに集まり、「サヨナラ」の人文字を描いて、長年親しんだ球場に別れを告げました。

同年7月に県営野球場が開場したのに伴い、高松市立中央球場は閉鎖、その後撤去されました。跡地には公園が整備されることとなり、1985年に高松市立中央公園として開園しました。公園の南側には、香川県出身の野球界の偉人である三原脩氏と水原茂氏の銅像が建立されており、また、かつて内野だった芝生広場には、本塁、一塁、二塁、三塁の元の位置を示すベース型のタイル石が埋め込まれており、球場があった記憶を今に伝えています。

プロ野球公式戦開催実績

高松市立中央球場では、通算10試合のプロ野球公式戦が開催されました。内訳は、1リーグ時代が2試合、セントラル・リーグが4試合、パシフィック・リーグが4試合です。特に、1949年8月10日の大阪タイガース対大陽ロビンス戦では、大阪の別当薫選手が当時の日本プロ野球タイ記録となる1試合3本塁打を記録しています。

施設概要（閉場時）

両翼: 92m
中堅: 113m
内野: クレー舗装
外野: 天然芝
照明設備: なし
スコアボード: パネル式

関連事項

日本の野球場一覧
高松市立中央駐車場
浄願寺

外部リンク

高松市立中央公園（高松市公式ウェブサイト）

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