高栄丸

高栄丸の概要

高栄丸（こうえいまる）は、1934年に進水した高千穂商船・大同海運所属の貨物船です。太平洋戦争中は日本海軍に徴用され、機雷敷設艦として活躍しました。戦後も商業航路で15年以上活躍し、日本の海運を支えました。

建造

高栄丸は、大同海運が太洋海運と共同設立した高千穂商船の最初の所有船として計画されました。当時、大同海運は自社船を持たない方針でしたが、自社船保有の必要性から高千穂商船を設立し、政府の補助金を利用して建造に至りました。三菱造船長崎造船所で建造され、1933年9月3日に進水、1934年1月10日に竣工しました。

設計は、広海商事の貨物船「広隆丸」と同型の6,000総トン級の大型貨物船で、北米からの材木や穀物の輸送を主な目的としていました。船体は三島型で、ディーゼルエンジン1基とスクリュー1軸を搭載し、13ノットの速力を発揮しました。同時期の貨物船には高速化や船内容積の拡大を図ったものもありましたが、高栄丸は従来型の仕様でした。しかし、その堅固な構造から不定期船としての経済性が評価され、同型船が多数建造されました。

船名は、船主である高千穂商船の社名から「高」の字を取りました。後に合併により船主となった大同海運は、高栄丸の長寿にあやかり、所有船に「高」の字を冠するようになりました。

運用

竣工後、高栄丸は大同海運の運航船として北米定期航路に就航しました。太平洋戦争が近づくと、日本海軍に徴用され、特設敷設艦として改装されました。船倉は機雷庫や兵員室となり、上甲板には機雷運搬用の軌条が敷かれました。武装として12cm砲や対空機関銃を搭載し、最大約700個の機雷を積載可能でした。機雷搭載能力は大きかったものの、正規敷設艦に比べると機雷の敷設能力は劣っていました。

1943年11月17日、船主の高千穂商船が大同海運に合併され、高栄丸も大同海運に移籍しました。特設敷設艦となった高栄丸は、防御用機雷堰の構築に貢献しました。特に太平洋戦争後半には、対潜水艦用の機雷堰構築に尽力しました。高栄丸が敷設に参加した機雷堰により、複数のアメリカ潜水艦が撃沈された可能性があります。しかし、水上艦艇や潜水艦による撃沈の可能性もあり、明確にはなっていません。

終戦間際には、樺太からの避難民輸送にも出動しました。また、三船殉難事件で撃沈された貨物船の生存者救助にもあたりました。終戦後、高栄丸はGHQの管理下に入り、復員輸送艦として利用されました。

その後、商業航路に復帰し、戦後初の遠洋商業航海として神戸港とアルゼンチンのブエノスアイレスを往復しました。この際、ブエノスアイレスでは歓迎晩餐会が開かれ、長崎の浦上教会へ聖母像を輸送しました。また、千葉港開港時には最初の大型船として入港し、地元市民に歓迎されました。

高栄丸は、同型船13隻の中で唯一太平洋戦争を生き残りました。1957年1月に福洋汽船に売却され、1962年5月に解体されました。

艦長

高栄丸の艦長を務めたのは以下の通りです。

鈴木幸三 大佐：1941年8月15日 - 1943年1月17日
渡邊彛治 大佐：1943年1月17日 - 1944年6月28日
高橋棐 大佐：1944年6月28日 - 1945年3月29日
中垣義幸 中佐/大佐：1945年3月29日 - 1945年9月26日
* 佐藤重吉 大佐/第二復員官/第二復員事務官/復員事務官：1945年9月26日 - 船長 1945年12月1日 - 1946年8月15日

まとめ

高栄丸は、貨物船として誕生し、戦時中は機雷敷設艦として、戦後は復員輸送や商業航海に従事するなど、激動の時代を駆け抜けた船でした。その長寿は、日本の海運の歴史において特筆すべきものであり、多くの人々に記憶される存在です。

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