復員輸送艦

復員輸送艦：祖国への航路

太平洋戦争の終結後、アジア各地や太平洋の島嶼には、軍人、軍属、民間人を含め、600万人以上の日本人が取り残されていました。彼らを日本へ帰還させるための緊急の課題は、復員輸送艦の活躍によって解決されました。

壊滅状態の商船と多様な艦船の動員

戦時中の徴用や攻撃により、日本の商船は壊滅的な被害を受けていました。そのため、復員輸送には、旧大日本帝国海軍の艦艇が主に使用されました。航行可能な軍艦の兵装を撤去し、仮設の居住区やトイレを設置して活用したのです。さらに、アメリカ海軍から供与されたリバティ船やLSTも多数動員されました。

改造された艦船と輸送能力

旧海軍艦艇の改造は、艦種によって異なりました。丙型[[海防艦]]では、約443人を収容できました。一方、空母葛城は格納庫を改造し、一度に約5000人を輸送できる巨大な復員船となりました。これらの艦船は、劣悪な状態であったにもかかわらず、多くの帰還者を乗せ、日本への航海を続けました。

輸送の開始とピーク

復員輸送は1945年9月26日、「高砂丸」が西カロリン諸島から1700人を乗せて別府港へ帰港したことを皮切りに開始されました。本格的な輸送は同年10月から始まり、1946年春から8月にかけてピークを迎えました。その後は徐々に艦船数を減らしつつ、1947年夏頃まで続けられました。

困難な航海と事故

復員輸送の任務は容易ではありませんでした。戦時中の酷使により、多くの艦船は老朽化しており、乗員の不足も深刻な問題でした。そのため、機械の故障や座礁事故などが頻発しました。第20号輸送艦、第116号輸送艦、海防艦「国後」、駆逐艦「神風」、雑役船「光済」などは、任務中に事故によって損失しています。

定係工作艦としての活用

航行不能となった艦船の一部は、定係工作艦として活用されました。船体や主機械は損傷していても、主缶や発電機などが使用可能な艦船を、復員輸送艦の到着港に係留し、他の艦船の修理や整備を行うために使用しました。巡洋艦「北上」や第174号輸送艦などが、この役割を担いました。

復員輸送艦のその後

復員輸送任務を終えた艦船の多くは解体されました。航行可能な駆逐艦以下の艦艇は、仮設設備を撤去した上で特別保管艦となり、呉港などに係留されました。その後、連合国に引き渡された艦艇もあります。一部の小型艦は運輸省に移管され、気象観測船などとして戦後も運用されました。「宗谷」のように、民間の引揚船として運用された例もあります。

復員輸送に使用された艦船の種類

復員輸送に使用された艦船は多岐に渡り、航空母艦、巡洋艦、潜水母艦、敷設艦、駆逐艦、海防艦、輸送艦、掃海艇、駆潜艇、敷設艇、雑役船、特設艦船など、実に様々な艦種が含まれていました。艦船のリストは、本記事の末尾に記載されています。

艦船リスト（抜粋）

本記事では、復員輸送に使用された艦船のリストをすべて記載することはできません。しかし、主な艦船の種類や艦名の一部を例として示すことで、その多様性と規模を理解していただけるでしょう。

航空母艦

鳳翔
葛城

巡洋艦

八雲
鹿島
酒匂

駆逐艦

夕風
汐風
波風
神風
響
雪風
春月
宵月
夏月
花月
その他多数

海防艦

占守
国後
択捉
隠岐
対馬
福江
その他多数

輸送艦

第9号
第13号
第16号
第19号
第20号
* その他多数

上記は、復員輸送に使用された艦船のごく一部です。その他、掃海艇、駆潜艇、敷設艇、雑役船、特設艦船なども多数動員されました。

結論

復員輸送艦は、終戦後の混乱期において、数百万人の日本人の帰還を支えた重要な役割を果たしました。その歴史は、戦争の悲惨さと同時に、人々の生還への強い意志と希望を物語っています。これらの艦船と、その任務に従事した人々の功績は、決して忘れてはならないものです。

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