高橋亨 (朝鮮学者)

高橋亨（たかはし とおる）の生涯と業績

高橋亨は1878年12月3日に新潟県で生まれ、生涯を通じて朝鮮学の発展に尽力した人物です。彼の父は漢学者であり、高橋はその影響を受けて成長しました。1898年に第四高等学校を卒業し、東京帝国大学文科に入学、漢文を専攻しました。彼は1902年に大学を卒業し、その卒業論文は『漢易を難して根本博士の易説に及ぶ』というものでした。これにより、彼の学問的な基盤が築かれました。

卒業後、高橋は九州の日報社の主筆として博多に移ります。しかし、翌1903年には、大韓帝国政府からの招聘を受けて官立中学校の教師となり、ここから彼の朝鮮での活動が始まります。彼は1909年に韓国語を広めるために『韓語文典』を出版し、1910年には『朝鮮の物語集附俚諺』を刊行しました。これらの業績は、彼が朝鮮の文化や言語に対して深い理解を持っていることを示しています。

高橋はその後、京城高等普通学校の教員や朝鮮総督府の宗教調査、図書調査の嘱託としても勤務し、1911年には普通学校用の諺文綴字法の会議に参加しました。1916年には大邱高等普通学校の校長に任命され、高等官五等に叙されました。このように、彼は教育面での強い影響力を持ち、多くの学生に指導しました。また、1919年には『朝鮮の教化と教政』という学位請求論文を提出し、文学博士号を取得しました。

1921年には朝鮮総督府の視学官となり、さらに京城帝国大学創立委員会の幹事としても活躍。1926年に同大学に教授として加わり、法文学部の朝鮮語学文学第一講座を担当しました。この頃、高橋は朝鮮語の正書法の制定にも関与しました。1931年には高等官一等に昇進し、1940年には京城私立恵化専門学校の校長に就任し、名誉教授となります。

しかし、太平洋戦争後、彼は隠遁生活を送ることになります。1945年には京城経学院の提学となり、その後、政務総監の賛意を受けて農士学校の建設に取り掛かりますが、終戦により計画は頓挫しました。1946年以降は易者として活動し、1949年には福岡商科大学の教授として復帰します。1950年には天理大学に招聘され、朝鮮学会を発足させ、副会長として活動しました。朝鮮学会は後の朝鮮研究に大きな影響を与えました。

1964年に彼は天理大学を辞し、その名誉教授第一号となりました。高橋亨はその生涯を通じて、朝鮮思想文化の研究に没頭し、戦前・戦後を通じて日本と朝鮮の学術交流に寄与しました。彼の著作には『高橋亨 朝鮮儒学論集』や『完本 高橋亨京城帝國大學講義ノート』があり、その業績は今もなお多くの研究者に影響を与えています。

高橋の教育及び研究への貢献は、彼の死後も高く評価され、彼の名は朝鮮学の分野で忘れられることはないでしょう。

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