高橋圭一 (日本文学者)

高橋圭一氏は1960年、徳島県生まれの日本文学研究者です。大阪大谷大学名誉教授の肩書きを持ち、近世日本文学、とりわけ実録本の研究において第一人者として広く知られています。

京都大学文学部を卒業後、同大学院博士課程に在籍。その後、尾道短期大学専任講師を経て、大谷女子大学（現・大阪大谷大学）文学部教授に就任しました。2015年から2018年までは大阪大谷大学文学部長を務め、2022年には名誉教授となりました。

氏の研究は近世実録本の解明に焦点を当てています。近世実録研究という新たな学問分野を開拓した先駆者の一人であり、実録本に関する研究論文や一般書を数多く発表。それらは、近世文学研究に多大な貢献を果たすと同時に、一般読者にも分かりやすく、魅力的な形で近世社会の様相を伝えています。

その著作には、『実録研究 筋を通す文学』（清文堂出版、2002年）、『大坂城の男たち 近世実録が描く英雄像』（岩波書店、2011年）などがあります。『実録研究 筋を通す文学』では、実録本の持つ文学性を深く掘り下げ、近世文学研究における新たな視点を提示しました。『大坂城の男たち 近世実録が描く英雄像』では、大坂城を舞台にした近世実録を精緻に分析し、そこに描かれた英雄像を多角的に考察しています。これらの著書は、近世日本文学研究に多大な影響を与え続けています。

また、高橋氏は校注者としても活躍しています。『太平楽府他 江戸狂詩の世界』（日野龍夫共編、平凡社東洋文庫、1991年）、『新日本古典文学大系 明治編 30』（村上浪六著、校訂、岩波書店、2009年）、『近世実録翻刻集』（山本卓共編、近世実録翻刻集刊行会、2013年）など、多くの古典籍の校注に携わってきました。これらの校注作業においても、氏の深い学識と綿密な研究姿勢が遺憾なく発揮されています。

さらに、高橋氏は講談にも造詣が深く、特に旭堂南海氏との交流を通して、講談という芸能が近世社会とどのように関わりを持っていたのかを研究に取り入れています。講談という伝統芸能と、近世実録という歴史資料を結びつけることで、近世社会の多様な側面を明らかにしようとする氏の研究姿勢は、他の研究者にも大きな示唆を与えています。

高橋圭一氏の研究は、近世日本文学研究に新たな地平を開いただけでなく、歴史学や芸能史研究など、多様な分野に影響を与え続けています。その業績は、今後も日本の文化研究において高く評価されることでしょう。

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