高橋美徳

高橋 美徳（たかはし よしのり）は、日本のボクシング史において、選手、そしてトレーナー、プロモーターと、多岐にわたる立場で貢献した傑出した人物である。1939年4月26日に青森県黒石市で生を受け、2018年5月23日に逝去した。現役時代は三迫ボクシングジムに所属し、主にウェルター級でリングに上がった。

彼のボクシングキャリアはアマチュア時代から華々しかった。青森商業高校では、1957年の全日本高校選手権ライト級で優勝を飾る。さらに、法政大学に進学後もその才能を開花させ、1961年には全日本大学選手権ウェルター級で優勝するなど、国内トップクラスのアマチュアボクサーとして確固たる地位を築いた。

1961年に三迫ジムの一員としてプロの世界に転じ、同年8月1日にプロデビュー戦を行った。プロ転向後の2戦目で黒星を喫するが、その後は見事な立ち直りを見せ、17連勝という破竹の勢いを示した。この連勝記録は、プロボクサーとしての潜在能力の高さを物語るものだった。

1963年3月には、世界ランキング入りを目指し、アメリカの強豪選手であるガーランド・ランドールとの試合が組まれた。しかし、この一戦は2回KO負けという厳しい結果に終わった。それでも高橋氏は挫けることなく、同年8月26日にはOBF東洋ウェルター級王座決定戦に出場。渡辺亮との一戦を判定で制し、東洋チャンピオンの栄冠を手にした。これは、プロキャリアにおける大きな節目となった出来事である。

東洋王者となった高橋氏の次なる目標は、世界の頂点だった。1964年1月4日、WBAおよびWBCの世界ジュニアウェルター級統一王者だったエディ・パーキンスへの挑戦権を得る。この世界タイトルマッチは、両者譲らぬ白熱した攻防が展開され、後世に語り継がれる「死闘」となった。しかし、惜しくも13ラウンドにKO負けを喫し、世界のベルトには手が届かなかった。

世界挑戦の後、高橋氏はOBF東洋王座の初防衛戦に挑んだものの、1964年5月8日、エリセオ・アランダに4ラウンドKOで敗れ、王座を失った。そして、同年9月24日に行われたラリー・フェルナンド戦を最後に、網膜剥離という不運な怪我のため、プロボクサーとしてのキャリアに終止符を打つこととなった。彼のプロ通算戦績は、30戦26勝（11KO）4敗という優れた記録である。

リングを降りた後も、高橋氏のボクシングへの情熱は冷めることはなかった。まずは古巣である三迫ジムでトレーナーとして指導者の道を歩み始める。そして、1971年4月1日には、自らの理想とするボクシングジム、国際ボクシングスポーツジムを設立。オーナー兼トレーナー、さらにはプロモーターとして、多角的にジム運営に携わった。

国際ボクシングスポーツジムは、高橋氏の指導のもと、日本のボクシング界を代表する名門の一つへと成長を遂げる。特に指導者としての手腕は特筆すべきもので、ロイヤル小林、レパード玉熊、セレス小林という3人もの世界チャンピオンを育成したことは、彼の偉大な功績として広く知られている。レパード玉熊は、偶然にも高橋氏と同じ青森商業高校、法政大学出身という後輩にあたる。

ジム経営や選手育成に加え、高橋氏は日本のボクシング界全体の発展にも貢献した。長年にわたり東日本ボクシング協会の副会長および事務局長という重要な役職を務め、協会の運営やボクシング界の基盤強化に尽力した。2017年3月まで国際ボクシングスポーツジムの会長を務めるなど、晩年までボクシング界に深く関わり続けた。

選手として、そして指導者・プロモーターとして、高橋美徳氏は日本のボクシング史に確かな足跡を残した人物である。アマチュアからプロ、そして多くの世界王者を育て上げたその功績は、今後も語り継がれていくことだろう。

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