高英起

髙英起（コウ・ヨンギ）氏は、1966年生まれの在日朝鮮人2世のジャーナリストであり、デイリーNKジャパンの編集長を務めています。大阪府で生まれ、大阪朝鮮高級学校を経て関西大学経済学部に進学しました。

大学在学中は、在日朝鮮人の学生組織に所属する傍ら、日本の新左翼や過激派の運動にも参加。しかし、新左翼をテーマにしたノンフィクションを通じて、北朝鮮こそがスターリン主義であると認識し、金日成体制を批判的に捉えるようになります。その後、反スターリン主義を掲げる新左翼にも魅力を感じて参加しますが、「どちらも中身は同じ」と気づき、以後は「ネタ作りで参加していた」と述べています。

1991年には、朝鮮社会科学院への留学から帰国した李英和氏から、北朝鮮の飢餓や人権侵害の実情を聞き、1993年に共に「救え！北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク（RENK）」を結成しました。

大学卒業後は大阪市水道局に就職しますが、1998年から1999年にかけて中国吉林省延吉市にある延辺大学に留学し、当時はほとんど知られていなかった脱北者や、北朝鮮のストリートチルドレンであるコッチェビの実態を現地から発信しました。

2010年からは北朝鮮情報専門サイト「デイリーNK」の東京支局長に就任。2011年には、金正恩の母である高英姫の出自について、従来の定説を覆すスクープ記事を発表しました。また、著書『コチェビよ、脱北の河を渡れ』の中で、自身の家系を辿ると、高英姫と同じ一族であり、金正恩とは遠縁にあたることが記されています。金正日総書記の死去以降は、テレビやラジオで北朝鮮関連のコメントをすることも多くなりました。

2014年には、韓国のデイリーNKから完全に独立し、『デイリーNKジャパン』を立ち上げ、編集長として独自の視点で北朝鮮情報を発信し続けています。

髙氏は、北朝鮮の現体制や金一族の個人崇拝については、一貫して批判的な立場を堅持しています。しかし、北朝鮮の映画や大衆音楽などの芸術文化については、「プロパガンダの中にも、彼らの創作魂が込められており、それに対しては敬意を表する」と述べ、積極的に紹介しています。特に、「北朝鮮の音楽こそが真のK-POPである」と主張し、DPR[[K-POP]]の普及活動にも力を入れています。

その活動の一環として、北朝鮮ポップスと韓国ポップスが対決するイベント「K-POP vs NK-POP」を開催。イベントの最後には、高氏が「たとえ音楽対決であろうと、百戦百勝の朝鮮労働党が負けることはありえない」と豪語するのが恒例となっています。このイベントの噂は北朝鮮にも伝わり、現地のガイドが訪朝した日本人にイベントについて尋ねたというエピソードもあります。

在日韓国・朝鮮人の社会運動や在日社会の在り方に対しては辛辣な批評を行っており、在日朝鮮人の人種差別的発言や、時折見られるヘイトスピーチに関する在日コリアンのダブルスタンダードに対しても、容赦なく批判しています。

著書には、『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』や『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』などがあり、北朝鮮に関する共著も多数あります。また、コラム連載「高英起の無慈悲な見聞録」も執筆しています。

髙氏は、ジャーナリストとしての活動を通して、北朝鮮の実情を多角的に伝え、その体制や社会について深い考察を促しています。また、在日朝鮮人としての視点から、在日社会の現状にも鋭い批評を加えています。

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