反スターリン主義

反スターリン主義：多様な批判と潮流

反スターリン主義とは、ヨシフ・スターリンとその政治思想であるスターリン主義に対する批判や反対運動を指します。その範囲は広く、共産主義圏内外の様々な立場や思想を含みます。本稿では、社会主義・共産主義内部からの批判、アナキズム、トロツキズム、そして日本の新左翼における展開を中心に、反スターリン主義の多様な潮流を考察します。

社会主義・共産主義内部からの批判

社会主義・共産主義内部における反スターリン主義は、マルクス主義の解釈や実践をめぐる多様な立場を反映しています。改良主義的な社会民主主義や修正主義は、マルクス主義の革命主義やプロレタリア独裁を批判しました。また、バクーニンらアナキズムは、マルクス主義における権威主義的な側面を強く批判しました。さらに、ローザ・ルクセンブルクはレーニン主義の一党独裁や民族自決政策を批判し、左翼共産主義はソ連型[[社会主義]]を「国家資本主義」と見なしました。

これらの批判は、レーニン主義の枠組み内にとどまるものから、根本的にマルクス主義を再考するものまで多様であり、反スターリン主義の基盤を形成する重要な思想的潮流と言えます。

アナキズムの極左的反共主義

アナキズム（無政府主義）は、スターリン主義の粛清や圧政を徹底的に批判しました。しかし、その批判はスターリン個人に留まらず、トロツキズムを含むボリシェヴィズム全体、そしてマルクス主義のプロレタリア独裁の概念そのものを、権威主義と圧政の根源として見なすものでした。このため、アナキズムの反スターリン主義はしばしば「極左的反共主義」とも呼ばれ、革命的な反共主義の重要な一翼を担っています。ミハイル・バクーニンは、早くから国家と権力の危険性を指摘し、『国家と無政府』においてプロレタリア独裁の危険性を予見的に批判していました。

トロツキズムのスターリン主義批判

レフ・トロツキー率いるトロツキズムは、ソ連を「官僚的に歪められた、堕落した労働者国家」と見なし、官僚支配を打倒し、真の労働者国家を建設するための革命が必要だと主張しました。ただし、トロツキズムはソ連を完全に否定するのではなく、ブルジョアジーによる生産手段の所有を廃した点に着目し、帝国主義からの攻撃に対しては擁護する立場を取ることがありました。また、非政権共産党に対しても、批判しつつも、労働者階級内部の革命勢力として共闘の可能性を模索する柔軟な姿勢を示しました。 日本の第四インターナショナル系の組織は、プロレタリア統一戦線戦術の一環として、歴史的に独自候補を擁立できない選挙においては、共産党への投票を呼びかけることもありました。これは他の新左翼の反スターリン主義勢力とは大きく異なる特徴です。

日本の反スターリン主義：新左翼と黒田寛一

日本の新左翼運動においても、反スターリン主義は重要な役割を果たしました。革マル派の指導者、黒田寛一は「反[[帝国主義・反スターリン主義]]」を提唱し、「真のマルクス・[[レーニン主義]]」に基づいてスターリン主義を批判しました。黒田はスターリンによるマルクス主義の歪曲や世界革命への裏切り、そして日本共産党の武装闘争路線放棄を強く批判し、「スターリン主義と帝国主義は同時に打倒されなければならない」という独自の理論を展開しました。この思想は革マル派や中核派といった新左翼組織の基本理論として受け継がれています。

一方、新左翼から転向した外山恒一は、マルクス主義の共産主義は資本主義高度発展後に実現するものであり、未発達な社会で成立した東側諸国は「紛い物」に過ぎないと批判しました。彼は黒田寛一を高く評価しつつも、革マル派そのものには否定的でした。

結論

反スターリン主義は、単一の思想や運動ではなく、社会主義・共産主義内部の様々な批判、アナキズム、トロツキズムなど、多様な立場と潮流から構成されています。その歴史的文脈や思想的背景を理解することで、20世紀の政治思想史における複雑な力学関係をより深く理解することができます。 さらに、黒田寛一のような革マル派の思想や、外山恒一の転向と批判を通して、反スターリン主義の多様な解釈と影響を改めて認識することができます。 反スターリン主義は、冷戦終結後も、様々な形で現代社会の政治思想に影響を与え続けています。

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