高見公明

高見 公明

（たかみ ひろあき）

アマチュアボクシング選手、指導者。1960年（昭和35年）8月7日生まれ。奈良県出身。

略歴と選手時代

高見公明氏は、日本のボクシング界において、選手としても指導者としても顕著な足跡を残してきた人物です。そのキャリアは、大阪体育大学浪商高等学校でのボクシングとの出会いから始まりました。高校時代にはその才能が早くも開花し、ボクシング競技でインターハイにおいて2年連続の優勝という輝かしい成績を収めました。

高校卒業後、高見氏は大阪体育大学へと進学し、競技を継続しました。大学時代には、後にプロボクサーとして東洋太平洋フライ級チャンピオンに輝く松村謙二氏と一年違いで共に汗を流しました。

大学卒業後、高見氏は地方公務員としての道を選び、奈良県立王寺工業高等学校に保健体育科の教員として着任します。教育者としてのキャリアをスタートさせた後も、選手としての情熱は衰えることなく、アマチュアボクシングの現役選手としてリングに立ち続けました。教職と競技生活を両立させながら、全日本選手権では通算4度もの優勝を達成し、国内アマチュアボクシング界のトップ選手としての地位を確立しました（優勝時の階級は資料によって特定できません）。

王寺工業高校の教員を務めていた頃、高見氏に選手として最大の栄誉となる舞台が訪れます。1984年にアメリカ合衆国で開催されたロサンゼルスオリンピックに、ボクシング競技バンタム級の日本代表として出場を果たしたのです。オリンピックという世界の強豪が集まる舞台では3回戦で敗退となりましたが、教育者でありながら日本代表としてオリンピックに出場した経験は、その後の指導者としての人生に計り知れない影響を与えました。

指導者キャリアの確立と名選手の育成

1991年（平成3年）、高見氏は奈良県立奈良工業高等学校へと異動となります。この転任が、高見氏の指導者としての名声を不動のものとする契機となりました。赴任当時、奈良工業高校にはボクシング部が存在しませんでしたが、高見氏はその設立に奔走し、自ら部の立ち上げから指導にあたります。

奈良工業高校ボクシング部は、高見氏の熱意と指導力によって、短期間のうちに全国レベルの強豪校へと成長を遂げました。そして、ここから日本のボクシング界を牽引する数多くのトップ選手が輩出されることになります。

その代表的な人物として、まずアトランタオリンピックとシドニーオリンピックの二大会連続で日本代表として出場し、全日本選手権では10連覇という日本のボクシング史において前人未踏の記録を樹立、さらに異なる4つの階級で優勝を飾った「アマチュアボクシング界のレジェンド」辻本和正氏が挙げられます。辻本氏は高校時代に高見氏の指導を受けていました。

プロボクシングの世界でも、高見氏の教え子たちが輝かしい実績を残しています。後にWBA世界スーパーフライ級チャンピオンとなり、日本人選手として初めて同王座を二度獲得した名城信男氏も、奈良工業高校で高見氏の指導を受けました。また、女子ボクシング界では、全日本選手権で6連覇という圧倒的な強さを見せた釘宮智子氏も、高見氏によって育てられた選手です。さらに、現在プロボクサーとして活躍する寺地永氏の次男である拳四朗氏も、この時期に高見氏から指導を受けています。

高見氏の指導は、奈良工業高校の選手だけにとどまりませんでした。後のロンドンオリンピックミドル級金メダリストであり、プロでも世界チャンピオンとなる村田諒太選手は、高見氏を自身の「初めての指導者」として公言しており、そのボクシング人生の基礎を築いた人物として深い敬意を表しています。また、プロボクシングのWBO女子世界ミニフライ級チャンピオンとなった池原シーサー久美子選手や、タレントとしても広く知られる山崎静代（しずちゃん）氏も、高見氏からボクシングの指導を受けた経験があります。これらの事実は、高見氏の指導が、多様なバックグラウンドを持つ選手たちの可能性を引き出すことに長けていることを示しています。

現在の活動と日本代表監督

現在、高見氏はかつて選手として勤務していた奈良県立王寺工業高等学校に戻り、保健体育科の教員として教鞭をとっています。同時に、同校ボクシング部の顧問として、新たな世代の指導に情熱を注いでいます。王寺工業高校においても、近年はプロボクシングの日本バンタム級チャンピオンとなった西田凌佑選手を輩出するなど、再び指導者としての実績を積み上げています。

長年の指導経験とアマチュア、プロ、そして女子ボクシング界への幅広い貢献が高く評価され、高見氏は日本ボクシング界全体を牽引する役割も担いました。2016年にブラジルで開催されたリオデジャネイロオリンピックでは、ボクシング競技の日本代表チームを率いる監督としてチームに帯同し、選手の活躍を支えました。

高見公明氏は、選手として自らオリンピックに出場し、引退後は教育者として数多くの日本を代表するボクサーを育成してきました。その指導は、技術だけでなく、人間的な成長を促すことにも重きが置かれており、多くの選手から慕われています。選手、指導者、そして代表監督という多角的な立場から、日本のボクシング界の発展に多大な貢献を続けている人物です。

関連項目

大阪体育大学の人物一覧

外部リンク

高見先生ファミリー

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