高見王

高見王：謎に包まれた桓武平氏の祖

高見王は、日本の歴史上、桓武平氏（武家平氏）の祖として知られる人物です。しかし、その生涯は謎に満ちており、確かな史実は極めて少ないと言わざるを得ません。主な情報源は『尊卑分脈』などの系図であり、これらの史料ですら、高見王に関する記述は断片的で、食い違いも見られます。

系図から読み解く高見王

『尊卑分脈』は、高見王を桓武天皇の皇子である葛原親王の子、そして平高望の父として位置づけています。兄弟には高棟王と善棟王がいたとされますが、これらの記述の信憑性についても疑問が呈されています。系図においては、高見王は無位無官であったと記されていますが、この点も大きな謎となっています。皇族の身分でありながら、生涯を通じて何らかの官職に就かなかったというのは、非常に異例と言えるでしょう。

食い違う生没年

高見王の生没年も、複数の史料によって大きく異なっています。例えば、『平姓奥州葛西系図』では弘仁元年（810年）から天安元年（857年）とされていますが、『千馬家系図』では弘仁8年（817年）から斉衡2年（855年）とされ、『千葉大系図』では天長元年（824年）から嘉祥元年（848年）とされています。さらに『系図纂要』では、生年不詳で仁和元年（885年）没と記されています。このように史料によって記述が大きく異なることから、高見王の生没年については、現時点では特定できないと考えられています。

実在性の問題

高見王の実在性についても、疑問視する意見が多く存在します。その根拠の一つは、父である葛原親王が、高見王が生まれる前にすでに平姓を賜り、臣籍降下を朝廷に要請し、それが認められていたという点です。にもかかわらず、高見王が平高見と名乗ったという記録は一切見当たりません。この点からも、高見王の存在そのものに疑問符がつきます。

さらに、高見王が病弱であったという伝承も存在しますが、仮に病弱であったとしても、成年まで生き延び、子孫を残したとすれば、無位無官であった点を説明することが困難です。皇族でありながら無位無官というのは、あり得ないことではないにせよ、非常に珍しいケースと言えるでしょう。

高見王否定説の台頭

これらの矛盾や疑問点から、現代の歴史研究においては、高見王は実在せず、平高望は葛原親王の直接の子であったとする説が有力視されています。つまり、高見王は系図上の架空の人物、もしくは実在した人物を元に創作された人物である可能性が高いとされています。

結論

高見王は、桓武平氏の祖とされる人物ですが、その実像は多くの謎に包まれています。史料の不足、記述の矛盾、そして実在性への疑問などから、高見王に関する確かな情報は限られています。今後、新たな史料が発見され、より詳細な研究が進められることで、高見王の謎が解き明かされる可能性も残されていますが、現時点では、系図に記された情報以上の確かな事実は確認できません。桓武平氏の起源を研究する上で、高見王は重要な人物ではありますが、その存在自体が大きな謎として、今後も歴史家の研究対象であり続けるでしょう。

もう一度検索