高速艇甲

高速艇甲（HB-K）

高速艇甲（こうそくていこう）、略称 HB-Kは、日本陸軍が開発したモーターボートであり、主に上陸戦の際の偵察や連絡任務を担っていました。この艇は1920年代にイギリス海軍の魚雷艇を原型に開発され、当時の日本軍用小型艇の中で最も速いものでした。その性能は日本海軍の一部にも評価され、派生型が提供されたこともあります。

開発の背景

1920年代、日本陸軍は上陸戦の研究を本格化させ、その中で敵前偵察や連絡などを行うための高速舟艇が必要であるとの結論に達しました。その結果、陸軍運輸部によって高速艇甲が設計されることになり、その開発は1926年にスタートしました。

最初のステップとして、イギリスのソーニクロフト社から魚雷艇が輸入されました。この艇を基にして研究が進み、不要な装置を取り除いて船体を若干大型化し、正式な型式として定められました。高速艇甲の主な特徴は、全長が約14.42メートル、幅が2.74メートルの木造船体で、最高速は37-38ノットに達しました。搭載された機関は400馬力のガソリンエンジン1基です。最初の艇には固定兵装はなく、無線通信機も搭載されていましたが、初期のモデルでは運用に難があったとされています。

生産と運用

当初、高速艇甲は機密保持のため、陸軍運輸部直営の工場でのみ生産されていました。しかし、日中戦争が始まると、民間造船所での建造も行われるようになりました。最終的に生産された艇は26隻に上り、戦局の変化によって1943年以降は生産が停止されました。初期の艇には一隻一隻に固有の愛称が付けられ、戦闘に投入された際には高い性能が評価されました。

1934年の合同演習には1隻が参加し、日中戦争では特に杭州湾上陸作戦での実績があります。この高速艇甲は、他の上陸用舟艇と組み合わせて運用され、多くの戦闘任務に従事しました。

派生型の開発

さらに、高速艇甲の性能を向上させるため、600馬力のガソリンエンジンを2基搭載した試作艇も開発され、最高速度38.7ノットを記録しています。また、1937年には海軍から拡張型の建造が依頼され、陸軍運輸部で製造された艇が海軍側に引き渡されました。この艇は、魚雷戦闘訓練の補助を目的としており、優秀な性能を持っていたことが評価されました。

戦争とその後

太平洋戦争の中でも引き続き、高速艇甲は実戦に投入され、特に南方作戦では上陸用舟艇に与えられ、戦闘でも活躍しました。しかし、アメリカ軍のPTボートと比較すると、火力に関しては劣っていたため、その点で劣位に立たざるを得ませんでした。戦争の進行と共に高性能の高速艇が求められ、陸軍と海軍の間での連携が重要とされる中、高速艇甲の役割はますます重要視されました。

高速艇甲は、日本陸軍が新たな戦術を模索する中で、短期間においても速力と機動性を兼ね備えた貴重な艇として、戦局に影響を与えた存在だったと言えるでしょう。

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