高野史緒

高野史緒（たかのふみお）は、1966年9月14日生まれの日本の小説家です。茨城県土浦市出身で、茨城大学人文学部卒業、お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程（フランス近世史専攻）修了という経歴を持ちます。日本SF作家クラブ会員、日本・ロシア協会普通会員、日本文藝家協会会員などの肩書きも持っています。

彼女の作品は、芸術と歴史、とりわけ音楽を深く絡ませた、ヨーロッパを舞台にしたSF的歴史改変小説という独特のスタイルが特徴です。イギリスのミュージシャン、トレヴァー・ホーンを敬愛しており、作品にその影響が見られることも公表しています。

1988年には、ニジンスキーをテーマにしたバレエ入り演劇脚本『エレヴァシオン』で第2回青山円形劇場脚本コンクール佳作を受賞。その後、1994年の第6回日本ファンタジーノベル大賞に『ムジカ・マキーナ』で応募し最終選考を通過、翌1995年に同作品で新潮社よりデビューを果たしました。

2012年には『カラマーゾフの妹』で第58回江戸川乱歩賞を受賞するなど、数々の賞に輝き、その実力は高く評価されています。2016年度から2018年度には日本SF大賞選考委員を務め、2021年度には『まぜるな危険』で第42回日本SF大賞候補にノミネートされました。2022年には『カラマーゾフの兄妹 オリジナルバージョン』で第22回センス・オブ・ジェンダー賞SF初志貫徹賞を受賞。さらに2023年には『グラーフ・ツェッペリン　あの夏の飛行船』で第44回日本SF大賞候補となり、『SFが読みたい！　2024年版』で国内第1位を獲得、第55回星雲賞日本長編部門を受賞しました。

高野史緒の作品リストは非常に長く、長編小説、短編集、アンソロジー編纂、翻訳、評論など多岐に渡ります。長編小説では、『ムジカ・マキーナ』、『カント・アンジェリコ』、『架空の王国』、『ヴァスラフ』、『ウィーン薔薇の騎士物語シリーズ』、『アイオーン』、『ラー』、『赤い星』、『カラマーゾフの妹』、『カラマーゾフの兄妹 オリジナル・ヴァージョン』、『翼竜館の宝石商人』、『大天使はミモザの香り』、『グラーフ・ツェッペリン　あの夏の飛行船』、『ビブリオフォリア・ラプソディ　あるいは本と本の間の旅』など多くの作品があります。短編作品も多数発表しており、単行本にまとめられたもの以外にも、多くの雑誌やアンソロジーに作品が掲載されています。

また、2011年には『時間はだれも待ってくれない　２１世紀東欧ＳＦ・ファンタスチカ傑作集』というアンソロジーを編纂し、東欧のSF・ファンタジー作品を紹介する役割も担っています。他にも、ジョン・グリビンの『ビッグバンとインフレーション　世界一短い最新宇宙論入門』の翻訳や、『ミステリとしての「カラマーゾフの兄弟」　スメルジャコフは犯人か？』といった評論活動も行っています。

2008年の長編『赤い星』以降は、ロシア文化への傾斜を強めており、その影響が作品にも色濃く反映されています。夫はロシア映画研究者の井上徹氏（2023年6月12日逝去）でした。

高野史緒の作品は、その緻密な構成、歴史とフィクションの巧妙な融合、そして音楽や文化への深い造詣によって多くの読者を魅了し続けています。その活動は、小説家としての枠を超え、翻訳家、評論家、アンソロジー編集者としても多様な才能を発揮しています。今後の作品にも期待が高まります。

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