高階業遠

高階業遠：平安時代中期の貴族の生涯

高階業遠(たかしなのなりとお)は、平安時代中期(965-1010年)に活躍した貴族です。左衛門権佐・高階敏忠の子として生まれ、従四位上・春宮権亮という高い官位に上り詰めました。

業遠の経歴は、朝廷における重要な役割を担っていたことを示しています。一条天皇の治世の中期には越中守として地方行政に携わり、その後は皇太子・居貞親王（後の三条天皇）に仕え、春宮少進、大進、そして権亮と、要職を歴任しました。これは、業遠が朝廷内で高い信頼と能力を認められていたことの証左と言えるでしょう。

業遠の才能は、建築事業への貢献にも表れています。寛弘元年（1004年）には羅城門の移築に功績をあげ、その功績により丹波守に任命されました。翌寛弘2年（1005年）には、豊楽院造営の宣旨を受け、重要な国土開発事業にも携わりました。丹波守には寛弘4年（1007年）にも再任されていますが、寛弘7年（1010年）3月に病気のため辞任し、同年4月10日に46歳でこの世を去りました。

業遠は、摂関政治の中枢を担った藤原道長の家司として仕え、「無双の者」と評されるほど信頼厚く、その手腕は高く評価されていました。業遠の邸宅は高倉にありましたが、彼の死後も道長やその子である頼通がしばしば滞在していたという記録が残っています。これは、業遠が道長ら有力者との緊密な関係を築いていたことを示唆しており、彼が朝廷内での政治的影響力を持っていたことを裏付けています。

業遠の官歴を時系列で見ていきましょう。

長徳3年（997年）8月28日：越中守
長保3年（1001年）4月20日：春宮少進（春宮・居貞親王）
寛弘元年（1004年）閏9月5日：丹波守（重任）
寛弘2年（1005年）8月21日：春宮大進
寛弘4年（1007年）正月：丹波守（重任）
寛弘7年（1010年）3月：丹波守辞任、4月10日：卒去（春宮権亮従四位上）

これらの記録から、業遠が地方行政から宮廷内での奉仕、そして重要な建築事業まで、幅広い分野で活躍していたことが分かります。

系図によると、業遠の父は高階敏忠、母は不明です。妻は修理大夫業平の娘であり、少なくとも四人の男子（高階成章、高階業敏、高階成行、高階成佐、高階成経）をもうけました。成章は業遠の子の中でも特に知られており、後の歴史にも名を遺しています。

高階業遠は、平安時代中期の政治・文化の中枢で活躍した重要な人物でした。彼の功績は、羅城門や豊楽院といった具体的な建造物にも残されていますが、それ以上に、藤原道長への貢献や、皇太子への仕えを通して、平安時代の中枢政治に深く関わっていたことが彼の生涯の大きな特徴と言えます。彼の没後も、邸宅が高官たちに利用され続けた事実は、彼が築き上げた人脈と影響力の大きさを物語っていると言えるでしょう。今後の研究により、さらなる業遠の活躍が明らかになることが期待されます。

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