高階業敏

高階業敏：平安時代中期の貴族の生涯

高階業敏は、平安時代中期に活躍した貴族です。正確な生没年については分かっていませんが、父は春宮権亮を務めた高階業遠です。業敏は最終的に正四位下、美濃守にまで昇進しました。彼のキャリアは、一条天皇の治世末期から後冷泉天皇の治世にかけての朝廷政治と複雑に絡み合っています。

華麗なるキャリアの始まりと転機

業敏は当初、修理亮を務めていました。しかし、寛弘8年（1011年）、父が仕えていた居貞親王（後の三条天皇）が即位すると、その縁故から六位蔵人に抜擢され、後に式部丞を兼任するようになりました。長和2年（1013年）には従五位下に叙せられ、順調な出世を遂げていきます。

その後、長和5年（1016年）には、後一条天皇の即位前後して肥前守に任じられますが、間もなく長門守に転任します。この人事には、当時大納言を務めていた藤原実資が異議を唱えていることが記録に残っています。実資は、この人事が藤原道長ら権力者の意向によるものだと疑念を抱いたとみられます。長門守在職中は、摂政藤原道長に毎年牛を献上していたという記録もあります。しかし、寛仁2年（1018年）には、鋳銭司判官の土師為元からの訴えによって解任されるという憂き目に遭います。

権力闘争と個人的な恨み

業敏は、小一条院（敦明親王）の恨みを買っていたと伝えられています。治安3年（1023年）には、賀茂祭の祭使として平安京に帰還した際、小一条院家の執事である高階在平の従者から暴行を受け、烏帽子を奪われ、髻をかき乱されるという屈辱的な体験をしています。この事件は、当時の朝廷における派閥争いや権力闘争の激しさを象徴する出来事と言えるでしょう。

晩年の活躍と受領の歴任

その後も、業敏は越中守を経て、長暦4年（1040年）には常陸介に、永承7年（1052年）頃には美濃守に任じられるなど、後一条朝、後朱雀朝、後冷泉朝と三朝にわたって受領の地位を歴任しました。これは、業敏が朝廷において重要な役割を果たし、一定の信頼を得ていたことを示しています。

家系と参考文献

『系図纂要』によると、業敏の父は高階業遠です。母については不明です。子息には高階経成（1021-1111）と高階基清がいます。

本稿の作成にあたり、参考文献として宮崎康充編『国司補任 第四』（続群書類従完成会、1990年）と市川久編『蔵人補任』（続群書類従完成会、1989年）を参照しました。これらの文献は、平安時代の官僚人事や地方行政に関する貴重な情報を提供するものです。

結論

高階業敏の生涯は、平安時代中期の政治的・社会的状況を反映した、波乱に満ちたものでした。権力者との複雑な関係、派閥争いへの巻き込まれ、そして個人的な恨みなど、様々な出来事が彼のキャリアに影を落としていますが、同時に、三朝にわたる受領の歴任という輝かしい実績も残しました。彼の生涯を詳細に検討することで、平安時代中期の朝廷政治や社会構造の一端を垣間見ることができるでしょう。

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