家司

家司（けいし、いえのつかさ）についての考察

家司とは、平安時代以降、主に親王家や職事三位以上の公卿、さらに将軍家に設けられた家政を担当する職員です。この役職は元々は律令制の下で正式に定められたものでしたが、次第に公家や官人、さらには庶民からも私的に選ばれるようになり、国政機関の職員と権力者の家政職員を兼ねる形が形成されていきました。

家司の歴史的背景

家司制度は、その成立の背景には律令制以前の皇親や豪族が有していた家政の組織が国家体制に取り込まれたことがあります。「家令職員令」の導入により、家令や扶、従、書吏といった四等官が設置され、官から職員が任命されるシステムが構築されたのです。また、養老3年（719年）には、五位以上の家に対して事業や防衛に関する職員の配置が認められ、さらには三位以上の散位や四位・五位の諸臣に宅司が設けられることが許可されました。

8世紀になると、無品の親王家においても令外の家政職員が現れ、知家事や知宅事と呼ばれる役割を持つようになります。次第に家司と令外の家政職員との区分が曖昧になり、家司は主人の意向に基づいて任命されるようになりました。地域においても郡司や富豪が家政組織に参加し、権力者層が形成される状況が見受けられます。

摂関期における家司の役割

摂関期には、家司制度はより発展し、別当や家令、知家事、案主、侍、書吏といった多くの職員が設置され、実務機関として政所や侍所、文殿、納殿などが機能しました。ここでの家司には、上家司と下家司の区別が存在し、上家司には公卿や四位、五位官人が、下家司には知家事以下の職員が含まれました。特に摂関家では、多くの受領が家司に任命され、その収益が摂関家の財政を支える一因となりました。

また、摂関家は蔵人や受領といった人事権にも大きな影響を持ち、摂関家が九条流に固定されることで、受領家司は他の公家を圧倒し続けることとなります。しかし、院政期に入ると、摂関家は弱体化し、受領家司は減少していく一方で、代々仕える家司が荘園経営の実務に従事するようになります。この時、院庁の職員である院司も家政職員としての役割を担います。

鎌倉時代における家司の変遷

鎌倉幕府が成立した際には、初期の組織が公卿として設置された家政機関としての性格を確保しました。鎌倉時代には、職事や弁官を務める能力ある公家が摂関家の家司や院司を兼務することで、政務の円滑化や権力間の調整が図られるようになりました。こうした経過を経て、家司制度は古代の家産制から中世の主従制へと変化していく過程をたどりました。

家司の終焉と後続の制度

しかし、家司という職名は室町時代にはほぼ使用されなくなり、その代わりに大夫や青侍を主体にした家僕が家庭の管理を担うようになりました。このように、家司制度は時代の移り変わりと共に様々な変容を経てきたのです。

参考資料と文献

• - 西山良平「家司」『日本歴史大事典 1』小学館、2000年。
• - 福井俊彦「家司」『平安時代史事典』角川書店、1994年。
• - 井原今朝男「家司」『歴史学事典 8 人と仕事』弘文堂、2001年。

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