高麗仏画

高麗仏画： восточноазиатское искусство

高麗仏画とは、高麗時代（918年 - 1392年）に制作された仏教絵画のことであり、その独特な様式と精緻な美しさで知られています。高麗仏画は、単に韓国美術史に留まらず、東アジア全体の美術史においても重要な位置を占めています。

現存する高麗仏画の現状

現在確認されている高麗仏画は約160点です。その内訳を見ると、日本に約130点、欧米に17点、そして韓国国内にはわずか13点しかありません。制作年が特定されているものとしては、1235年から1236年にかけて制作された「金義仁発願五百羅漢図」が最も古く、次いで1286年の「阿弥陀如来図」、1294年の「弥勒大成仏教変相図」などが挙げられます。

日本への渡来をめぐる論争

日本に伝わる高麗仏画の多くは、元時代（1271年 - 1368年）の中国絵画、または宋時代（960年 - 1279年）の画家である張思恭の作品として伝えられてきました。しかし、韓国では、これらの高麗仏画の多くは倭寇によって略奪されたものだと主張されています。一方、日本では、李氏朝鮮時代の仏教弾圧によって日本に流出したという見方が一般的です。

豊臣秀吉の朝鮮出兵の際の戦利品であるという説も存在しますが、美術史家の 上垣外憲一氏は、この説には慎重な検討が必要であると指摘しています。当時の時代背景として、戦利品として説明することが一種の美学であった可能性も考慮すべきだと述べています。

李氏朝鮮政府は仏教弾圧政策を進める一方で、高麗仏画を貿易品として日本に輸出し、また日朝間の親睦のために贈答品として用いることもありました。上垣外氏は、日朝関係を戦争の歴史として捉えることによって歴史認識が歪められると指摘し、日本にある朝鮮文化財をすべて略奪品と断定する見方を批判しています。

韓国人窃盗団による盗難事件

1990年代後半から2000年代初頭にかけて、韓国人窃盗団によって日本各地の寺院から高麗仏画が盗まれる事件が相次ぎました。1998年には大阪府の叡福寺から「楊柳観音像」、2001年には愛知県の隣松寺から「絹本著色観経曼荼羅」、2002年には兵庫県の鶴林寺から「絹本著色阿弥陀仏三尊像」が盗難に遭いました。2004年に窃盗団が逮捕され、犯行が明らかになりました。窃盗団は「日本が略奪した文化財を取り戻す」という動機を主張しましたが、実際には盗品をすぐに売却しており、金銭目的であったことが判明しています。

盗まれた仏画の一部は韓国国内に持ち込まれましたが、その後行方不明となっています。

高麗仏画展

2010年には、韓国国立中央博物館で「高麗仏画大展」が開催され、韓国、日本、欧米に所蔵されている高麗仏画61点が集められました。これは過去最大規模の展示となり、高麗仏画の美しさとその歴史的背景に触れる貴重な機会となりました。

高麗仏画は、その繊細な描写と鮮やかな色彩、そして仏教的なテーマを通じて、高麗時代の文化と信仰を現代に伝えています。これらの絵画は、歴史的な経緯を背景に、今日もなお多くの人々を魅了し続けています。

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