高麗航空

高麗航空 (Air Koryo)

高麗航空は、朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）における唯一の国営航空会社であり、1955年に設立されました。当初は「朝鮮民航」という名称で、1993年に現在の名称に変更されました。平壌国際空港を拠点として、中華人民共和国やロシアへの国際線と国内線を運航しています。航空会社コードは「JS」で、国際航空運送協会（IATA）にも加盟していますが、スカイトラックス社からは最低評価の「1つ星航空会社」として認定されています。

運航情報と機材

高麗航空は、国内便と国際便を合わせて10機以上を保有し、4機の旅客機を利用して国際定期路線を運航しています。2021年時点では、北京、瀋陽、成都、咸陽、マカオ、ウラジオストクに向かう便があります。航空機種にはソ連製のツポレフやイリューシン、最近ではロシア製のツポレフTu-204やウクライナ製のアントノフAn-148などが含まれています。ただし、これまでに西側製の航空機を導入したことはありません。

歴史的背景

高麗航空の前身は、旧ソビエト連邦と合弁によって運営されていたSOKAOという航空会社で、1950年の朝鮮戦争によって運航が停止しました。1954年には「朝鮮民航」が設立され、1955年9月21日から運航を開始しました。最初の飛行機は旧ソ連製の双発レシプロ機が中心で、1960年代にはターボプロップ機の導入が進みました。1975年に初のジェット機Tu-154を導入し、国際路線を拡大しましたが、近年は財政難や国際政治の影響で路線の縮小が進んでいます。

1993年以降は、航空事業を国営企業として運営しており、経営の多角化にも取り組み始めています。タクシー業務やソフトドリンクの製造・販売、さらにはガソリン小売にも進出していることから、航空事業以外でも事業を展開しています。

安全性に関する問題

高麗航空は過去にいくつかの安全性の問題を抱えており、その影響でEU内での運航が禁止されています。フランスやドイツで行われた抜き打ち検査では、安全基準を満たしていないことが確認され、修正が不十分であったため、運航が停止されました。また、中国政府も北朝鮮の航空機の安全性を懸念し、離着陸を禁止する措置を講じたことがあります。

COVID-19の影響

新型コロナウイルスの影響で、2020年に国境が封鎖されたため、高麗航空は全ての国際線の運航を中止しました。この休航は約3年半続き、2023年8月にようやく平壌-北京間の運航が再開されました。回復には時間がかかると見込まれていますが、高麗航空の再開に向けた動きが期待されています。

まとめ

高麗航空は、北朝鮮における重要な交通手段であり、歴史的に多くの変遷を経てきました。国内外へのフラッグキャリアとしての役割を果たしながらも、安全性の問題や国際関係の影響を大きく受ける航空会社です。今後の運航の拡大と安全基準の向上が望まれます。

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