鬼一法眼

鬼一法眼（きいちほうげん）は、室町時代初期に成立したとされる軍記物語『義経記』の巻二に登場する伝説上の人物です。この物語において、「法眼」とは僧侶に対する敬称であり、彼自身の名前ではありません。鬼一法眼は、京の一条堀川に住んでいたとされ、僧侶の姿をした陰陽師として描かれています。

彼は、単なる陰陽師としてだけでなく、兵法の大家としても知られていました。特に『六韜』という兵法書に通じており、文武両道に秀でた人物として語り伝えられています。有名な伝説の一つに、源義経が鬼一法眼の娘と密かに通じ、その間に伝家の兵法書である『六韜』を盗み出して学んだという話があります。この伝説は、鬼一法眼の知恵と、義経の才覚を象徴的に表していると言えるでしょう。

また、鬼一法眼は剣術においても特別な存在とされています。彼は、京八流の祖として、剣術の神として崇められてきました。京八流とは、京都を中心に発展した剣術流派の総称であり、鬼一法眼がその基礎を築いたとされています。彼の剣術の腕前は、伝説の中で非常に高く評価されており、多くの剣術家たちに影響を与えたと考えられています。

鬼一法眼は、浄瑠璃の世界でも人気を博しており、特に「鬼一法眼三略巻」は、多くの人々に知られています。この浄瑠璃は、長谷川千四と文耕堂によって1731年に竹本座で上演され、鬼一法眼の物語を広める上で重要な役割を果たしました。

京都市立鞍馬小学校の横には、「鬼一法眼之古跡」と刻まれた石碑が建立されており、この場所が鬼一法眼の屋敷跡、あるいは墓であると伝えられています。この石碑は、大正4年11月10日に鞍馬小学校の職員と生徒によって建立されたもので、地域の人々が鬼一法眼を敬い、その伝説を大切にしている証と言えるでしょう。

さらに、鞍馬寺の境内には、鬼一法眼を祀る鬼一法眼社が存在します。この神社は、鬼一法眼を神として崇め、その武芸と知恵を称えるために建立されたと考えられます。

鬼一法眼は、歴史上の人物であるかどうかは定かではありませんが、多くの物語や伝説の中で、その名前が語り継がれてきました。彼は、陰陽師、兵法家、剣術家という複数の顔を持ち、その多才さと神秘的な魅力で、人々の心を捉えてきたと言えるでしょう。

関連作品

鬼一法眼は、様々な作品の中で描かれてきました。以下に代表的なものを紹介します。

唖侍鬼一法眼（1973年 - 1974年）：若山富三郎が演じた時代劇。
義経（2005年、テレビドラマ）：美輪明宏が鬼一法眼を演じた。
アオイシロ（2008年、ゲーム）：園部好徳が声を担当。
Fate/Grand Order|Fate_Grand Order（2021年、ゲーム）：加隈亜衣が声優を務める。

関連項目

判官みやこはなし
京八流

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