鬼六流ドッカン飛車

女殺しドッカン飛車：奇襲戦法の全貌

女殺しドッカン飛車（おんなごろしどっかんびしゃ）、あるいは鬼六流ドッカン飛車、団鬼六流どっかん中飛車と呼ばれるこの将棋戦法は、その奇抜な戦術から多くの注目を集めています。BDSM作家、団鬼六が女性プロ棋士を相手に用いたとされる逸話も手伝い、将棋界においては異色の存在感を放っています。

この戦法は、基本的に居飛車相手に用いられる振り飛車戦法です。最大の特長は、初期局面から飛車を5筋に繰り出し、角交換を絡めた向かい飛車型への移行を狙う点にあります。一般的な振り飛車戦法とは異なる、非常に攻撃的な姿勢が見て取れます。

戦法の特徴：異例の初期展開と角交換

女殺しドッカン飛車の初期配置は、先手の▲5八飛から始まります。これは、飛車を盤上の端まで移動させる珍しい開始で、相手を不意を突く狙いがあります。後手が3筋の歩を進めると、先手は鬼六流戦法を試みる可能性が高まります。

その後、先手は▲3八金と右金を3筋に動かすという、これもまた独特な手筋を用います。これは、後手の角交換(△4五角)などへの対策として機能します。

その後、玉を金美濃囲いに素早く配置することが目標となります。後手は飛車先を突いて飛車の活動を促し、居飛車型を選択することが多いです。先手は、玉を盤の左側から遠ざけながら、角道を確保して角の脱出ルートを確保します。

両者とも囲いを構築する過程で、玉を盤の中央から右側に移動させます。13手目までには、先手は玉を金美濃囲いに配置します。これは、飛車を8筋に移動させる前の鬼六流の基本的な形です。

攻撃：角交換と向かい飛車

攻撃の開始は、後手が8筋で歩交換を開始するところから始まります。その後、先手は角交換を仕掛け、角を8八から離脱させます。この角交換が、向かい飛車型への移行を促す重要な局面です。

先手は飛車を8筋に移動させ、向かい飛車型を完成させます。後手の飛車は8六に位置し、無防備な状態です。後手が8六歩と突いてきた場合、同歩、同飛と進めて角交換を成立させ、8八に飛車を配置するのが鬼六流の定石です。この手順は、1970年代の升田流や2010年代からのゴキゲン中飛車田村式にも見られるものです。

しかし、後手が飛車交換を拒否し、8七歩と飛車上に歩を打つ展開も考えられます。この場合、先手はさらに巧妙な手筋で攻めを継続していきます。後手は8筋に打ち込むスキが残るため、飛車交換に応じると囲いの堅さにおいて先手に分があるとされるため、飛車交換拒否が本筋となります。

バリエーションと発展性

上記の基本形以外にも、様々なバリエーションが存在します。到達経路の違いや、それぞれの局面における対応策によって、戦況は大きく変化します。高度な読みと判断力が要求される戦法であり、熟練者でも対応に苦慮する場面があるでしょう。

まとめ

女殺しドッカン飛車は、その奇抜な戦術と高い攻撃性で知られる、非常に独特な将棋戦法です。一般的な戦法とは異なる発想に基づいており、将棋の奥深さを改めて感じさせてくれます。しかし、その複雑さゆえに、習得には相当な時間と努力が必要となるでしょう。 奇襲戦法としてだけでなく、将棋における戦術の多様性を示す好例と言えるでしょう。

参考文献

湯川 博士 (1989). 奇襲大全. マイナビ出版. ISBN 978-4-83995-787-2
飯塚祐紀 (2014). 奇襲振り飛車戦法～その狙いと対策～. マイナビ出版. ISBN 978-4-8399-5372-0

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