鬼庭良直

鬼庭良直：伊達氏を支えた知将、左月斎

鬼庭良直（おににわ よしなお）は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将で、伊達氏の家臣として知られています。左月斎（さげつさい）という号でも広く知られています。

生涯

1513年、鬼庭元実の子として生まれた良直は、1539年に父の隠居に伴い家督を相続しました。1542年に勃発した天文の乱では、父と共に伊達晴宗方として参戦し、その功績により1549年には長井郡川井城主となり、所領を2000石に加増されました。

1564年、伊達輝宗が当主となると、その側近として評定役に抜擢され、遠藤基信と共に輝宗政権の中核を担うことになります。良直は輝宗の信任に応え、1575年には嫡男・綱元に家督を譲り隠居しますが、その後も輝宗の側近として政務に携わりました。

1585年、伊達政宗が家督を継いだ後、輝宗が殺害されるという事件が起こります。その直後、佐竹義重が南奥の諸侯を糾合し、伊達軍を攻撃するため安達郡に攻め入りました。これが人取橋の戦いです。

この戦いで、良直は政宗から指揮を任され、金色の采配を授けられました。しかし、兵力に劣る伊達軍はたちまち潰走。佐竹軍に本陣への突入を許すという危機的な状況に陥ります。そこで良直は、政宗を逃がすため、自ら殿軍を引き受け、敵陣に突入しました。

高齢のため重い甲冑を身に着けることができなかった良直は、兜の代わりに黄綿の帽子という軽装で戦いました。最前線で奮戦し、鬼庭隊は200余の首級を挙げたとされています。その間に政宗は本宮城へと逃げ延びることができましたが、良直自身は岩城常隆の家臣である窪田十郎によって討ち取られました。享年73歳でした。

政宗は良直の功績を称え、その隠居領分の知行を未亡人に与え、終身安堵する旨の朱印状を発給しました。

人物

良直は、武勇に優れていただけでなく、政治的な手腕にも長けた人物であったと考えられています。伊達輝宗政権の中核を担い、その信任を得ていたことからも、その能力の高さが窺えます。また、人取橋の戦いでは、自らの命を顧みず主君を守ろうとしたことから、忠義に厚い人物であったとも言えるでしょう。

鬼庭良直の系譜

父：鬼庭元実（左衛門、露月斎）
正室：本沢真直の娘 - 良直と離縁後、片倉景重と再婚し景綱を産む。
継室：牧野刑部の娘
子：鬼庭綱元

関連作品

* 『独眼竜政宗』（1987年NHK大河ドラマ、演：いかりや長介）

まとめ

鬼庭良直は、伊達氏の家臣として、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将です。左月斎の名で知られ、伊達輝宗、伊達政宗という二代の当主に仕えました。特に人取橋の戦いでの壮絶な最期は、後世に語り継がれることとなりました。武将としての勇猛さだけでなく、知略にも長けていた良直は、伊達氏の発展に大きく貢献した人物と言えるでしょう。

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