魅せられし変容〜ベスト・オブ・デヴィッド・ボウイ

魅せられし変容〜ベスト・オブ・デヴィッド・ボウイ

『魅せられし変容〜ベスト・オブ・デヴィッド・ボウイ』（原題: "Changesonebowie"）は、イギリスのミュージシャン、デヴィッド・ボウイが1976年に発表したキャリア初となる公式ベスト・アルバムです。それ以前にも彼の楽曲を集めた編集盤は存在していましたが、主要レーベルからリリースされ、ボウイ本人が関与した最初の総括的な作品として位置づけられています。

本作の選曲は、1969年のデビュー初期から、当時の最新アルバムである1976年発表の『ステイション・トゥ・ステイション』に至るまでの期間に焦点が当てられています。初期のフォークロックから、グラムロック期の代表曲、「ヤング・アメリカンズ」に代表されるソウルミュージックへの接近など、1970年代前半の彼の目覚ましい音楽的変遷を辿ることができます。この選曲作業には、デヴィッド・ボウイ自身も深く関与したと伝えられています。

アルバムのデザイン面では、先行してリリースされたスタジオアルバム『ステイション・トゥ・ステイション』のアートワークとの視覚的な繋がりが意識されています。タイトルロゴなどに共通のフォントや構成要素が用いられており、作品の世界観に連続性を持たせています。また、印象的なジャケット写真の撮影は、マリリン・モンローの有名なピンナップ写真を手がけたことで知られる写真家、トム・ケリーが担当しました。

商業的にも成功を収め、特に故国イギリスではアルバムチャートで最高位2位を記録するヒットとなりました。これにより、ボウイの広範なキャリアや多様な音楽性に触れる機会が、当時の多くの音楽ファンに提供されました。

本作の成功を受けて、デヴィッド・ボウイのキャリアを時代ごとに振り返るベストアルバム企画は継続されました。1981年には、続編となる『美しき魂の告白』（原題: "Changestwobowie"）がリリースされ、1977年以降の楽曲が中心に収録されています。

後の音楽メディアの変化に伴い、本作はCD化される際に内容が大幅に見直されました。1990年にEMI（北米ではRYKO）からリリースされたCD版は、『チェンジスボウイ』（原題: "Changesbowie"）と改題され、収録曲数が大きく増やされました。オリジナル版の範囲を超え、「ヒーローズ」、「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」、「レッツ・ダンス」といった1970年代後半から1980年代にかけてのヒット曲や代表曲が多数追加され、全体で20曲以上を収録する集大成的な内容となりました。さらに、オリジナル版に収録されていた「フェイム」は、このCD化のために新たにリミックスされた「フェイム'90」に差し替えられています。この1990年版は、それ以降の標準的なベスト盤として広く認識されることになります。

『魅せられし変容〜ベスト・オブ・デヴィッド・ボウイ』は、1976年時点での彼の芸術的な軌跡を初めて公式に総括した作品であり、デヴィッド・ボウイの数々の名曲を知る上で、また「Changes」というベストアルバムシリーズの起点としても、その歴史的意義は大きいと言えます。

もう一度検索