魏観

魏観（ぎ かん）は、生年不詳ながら1374年に没した、元末から明初にかけての学者であり官僚です。字は杞山といい、本貫は鄂州蒲圻県にありました。

生涯

元末の混乱期には、蒲山に隠棲していました。1364年（至正24年）、朱元璋が武昌を攻略すると、その才能を見出され招聘を受け、国子助教に任じられます。その後、浙江按察司僉事を経て、1367年（至正27年）には両淮都転運使に転じました。中央に召還されると、皇帝の動静を記録する起居注の職務を担いました。

朱元璋の命により、呉琳とともに各地の賢者を求める任務に赴きます。1368年（洪武元年）に大本堂が設立されると、皇太子や諸王に対して経書を講義する教育者としての役割も担いました。その後、文原吉、詹同、呉輔、趙寿らと共に、再び各地を巡り、有能な人材の発掘に尽力し、彼らが推挙した人物の多くが実際に任用されました。

1370年（洪武3年）には、太常寺卿に任じられ、諸々の祭祀の典礼を考証・整備しました。その働きぶりが朱元璋の意にかなったことで、侍読学士、次いで祭酒へと昇進を重ねます。しかし、翌年、孔子を祀る礼に関する上奏を怠ったとして罪に問われ、竜南知県へ左遷されます。その後まもなく呼び戻され、礼部主事に任じられました。

1372年（洪武5年）、推薦により蘇州府知府として赴任します。前任の知府であった陳寧の苛酷な統治は「陳烙鉄」とまで呼ばれていました。魏観は、陳寧の政策を全て改め、儒教的な教化と風俗の改善を重視した統治を行いました。学校を建て、周南老、王行、徐用誠らを招聘し、教授の貢穎之とともに学問の規範を定めました。また、王彜、高啓、張羽に命じて経書や史書の校訂を行わせ、高齢で徳のある民である周寿誼、楊茂、林文友を郷に派遣し、飲酒の礼を行わせました。翌年、四川参知政事に抜擢されますが、蘇州府の民衆がその留任を請願したため、再び蘇州府知府に任命されました。

かつて張士誠は、蘇州旧治に宮殿を置き、府治を都水行司に移していました。1374年（洪武7年）、魏観は、その地が低く狭いことを理由に、府治を旧治に戻しました。また、蘇州の濠を浚渫し、水利事業を興しました。

しかし、蔡本が魏観は呉（張士誠）の基盤を復興しようとしていると誣告しました。朱元璋は御史の張度を派遣して真相を調査させましたが、張度は魏観と仲が悪かったため、誣告を真実として報告しました。これにより、魏観は王彜や高啓と共に処刑されるという悲劇的な結末を迎えます。しかし、朱元璋は後に事実を悟り、その誤りを後悔し、魏観の遺体を故郷に葬ることを許しました。

著書に『蒲山集』4巻があります。

人物

魏観は、学者としてだけでなく、教育者、官僚としても優れた能力を発揮しました。特に蘇州府知府としては、民政を重視し、民衆からの信頼も厚かったことが、留任を請願されたことからも伺えます。しかし、その功績とは裏腹に、無実の罪で処刑されたことは、彼の悲劇的な生涯を物語っています。

参考資料

* 『明史』巻140 列伝第28

もう一度検索